Hisaaki SHINKAI Homepage

What I Recommend Today (not physics)


Opening | Oct.10 | Nov.04 | & switch to [Nov/96] | [contents]
=== (^o^) === What I Recommend Today === (^_^; ===
Opening

Dear friends,
This is the first issue of my new newsletter, "What I Recommend Today", which I intend to inform you what I feel interesting or moved recently. This news will be published irregularly using e-mail with free charge. If you want receive this news further or if you know someone who wants to receive this, please let me know. Any comments and your information are welcome. All words will be stocked in my www homepages, as well as my "Radical Japanese Lessons for Researchers" last year. (Do you know it continued up to lesson 70?). [Now our system is not open to the world. If this system become available, I will inform you.]
Enjoy and have fun.
不定期刊行物「今日のおすすめ」創刊です. 勝手に送付させていただいてますが,次号以降も送付希望の場合あるいは お近くに送付希望の方がいらっしゃいましたら,お知らせください.


=== (^o^) === What I Recommend Today === (^_^; ===
Oct 10,1996

1) イルカの気泡リング遊び, 日経サイエンス,1996年10/11月号
Ring Bubbles of Dolphins
by K.Marten, K. Shariff, S. Psarakos and D.J. White
in Scientific American, August 1996

2) 「新解さんの謎」赤瀬川源平著,文藝春秋,1000円
Shinkai san no nazo (Secrets of Mr. Shinkai), by Genpei Akasegawa, Bungei Shunjyuu
新明解国語辞典の異様な例文から辞典執筆者の人物像を探ってゆく.

3) 「海外個人旅行 マル得 マニュアル」山下マヌー著,小学館,1100円
Kaigai Kojin Ryokou Marutoku Manual, by Manu Yamashita, Shougakukan
 近頃,この手の海外生活マニュアル本を読みあさっているが,この本は独自の 視点を持っており,群を抜いて面白い.本書は雑誌「DIME」に連載された『地球 プレーヤー養成講座』をまとめたものだが,著者自身楽しみながら書いているこ とがよくわかる.何しろ書かれている内容は,どこの本にもあるような「海外で 盗難に気をつける方法」のような陳腐なハウトゥーものにとどまらず,(1)格安チ ケットでいい座席を手に入れるにはどうしたらいいか,(2)スチュワーデスと知り 合いになるためのコツは何か,(4)成田離婚を避ける方法は,(3)お忍び旅行がば れないための工夫は,などの実践的(?)な事柄に多くのページ数を割いており, いずれも納得させられる真面目な解答が用意されている.内容をここで公開するの は心苦しいが,ちょっとだけ,お教えしよう.(1)格安チケットを成田で並んで搭 乗券に換えるのを防ぐため,あらかじめ「箱崎で手続きしますから」といってチケ ットを手に入れてしまう.(2)ジャンプシートに席を取り,映画が始まって1時間 ほどしたら,暇そうにしているスチュワーデスに腰痛の話をもちかける.(3)パック ツアーをなるべく使わず,かつ日本語だけですべて済ませられるようにホテルや タクシーをアレンジする.(4)野茂の出る野球観戦は避ける(テレビ中継されるた め).すべてにわたり,こんな感じだ.全編を通じて,如何に見栄を張り,はっ たりをしながら,旅費の元手をとるか,という視点で書かれており,本書も帯を とれば,外見上は洋書のような装丁になっているところなど,実に痒いところま で心尽くしがされている.


NERD TEST
RITA RUDNER'S FACTS ABOUT MEN
=== (^o^) === What I Recommend Today === (^_^; ===
Oct 28,1996

4) 石川三千花の勝手にシネマ1・2,世界文化社,各2200円
Katte ni Cinema vol.1 & 2, by Michika Ishikawa,
SekaiBunkaSha, 2200 yen
「映画は俳優がすべてである」を信条とするイラストレーター石川 三千花氏の最新映画時評.秀逸なイラストもさることながら,観客 として映画を見る視点が凡人とおおいに異なり,映画の面白さを拡 大させてくれる楽しい本だ.深夜テレビの『シネマ通信』で毎週1 つづつ紹介されていたものだが,まとめて読むと,三千花氏の独壇 場から一貫した人柄も探れてまた楽しい.いいものはいい,だめな ものはだめ,と自分の感性ですっぱりと言い切って,それを世間に 問えるということは,なんと気持ちのいいことか.同じ映画でも, 名台詞のみを取り出した和田誠の『お楽しみはこれからだ』(文藝 春秋,各1500円)は,最近第6巻まで出版されたが,石川三千花の 潔さにくらべると,やや不満が残ってしまう.こちらの方は事典的 に使うには便利この上ないのだが.

5) エド・ウッドとサイテー映画の世界,洋泉社,1700円, 洋泉社Movie Treasure Vol.1,Ed Wood to saite- eiga no sekai
6) 底抜け超大作,洋泉社,1300円,洋泉社Movie Treasure Vol.6,  Sokonuke chou-taisaku
ついでに映画関連の本をもう2つ. どんなマイナーな分野でも,それを極めている達人を世の中では「お たく」と並び称しているが,そのなかでも「いいおたく」と「悪いお たく」に2分されよう.つまり,その知識を広く公開して,その分野 の先導者として活躍する人種と自分に閉じこもってしまう人種である. これら2冊の本は,「いいおたく」達の書いた典型的な楽しい本だ. 低予算で次々とC級映画を量産したエド・ウッドこそ今では有名になっ ているが,世の中もっと「サイテー映画」はあるよ,という紹介本と, いくら制作費をかけて豪華なスターを集めても駄作になってしまった 映画特集である.たとえばパクリ映画大流行の香港では,ブルース・ リーのそっくりさんとして,ブルース・リ,ブルース・ライ,ドラゴ ン・リーの3人が活躍していた,とか,本気にすると歴史では赤点必至 の映画一覧とか,...どうも最近この手の本にはまってしまって.

7) ジェイムス=ジョイスの謎を解く,柳瀬尚紀著,岩波新書,650円
James Joyce no nazo wo toku, by Naoki Yanase, Iwanami Shinsho, 650 yen
ジェイムス=ジョイスの『ユリシーズ』が,今夏2つの出版社から新 訳が出され,しかもそれが早稲田の理工学部生協に平積みされてい たので,僕は相当驚いた.これはチェックすべきかな,と本屋で立 ち読みするうちに,この本を発見した.僕はまだ長編小説本体には 手をつけていないが,この新書にはそのエッセンスが解説されてい て興味を倍増させてくれる.ジョイスは作品中にいろいろと謎をし かけていたが,そのなかでもダブリンの安酒場でえんえんと愚痴る 「俺」が実は犬である,という新たな解釈を立証していくのだ.し かも作者のこの発見が,将棋の羽生名人との対談に端をなすという のも興味深い.


=== (^o^) === What I Recommend Today === (^_^; ===
Nov 4,1996

8) 「転回の時代に」池内了著,岩波書店,1000円
Tenkai no Jidai ni, IKEUCHI Toru, Iwanami, 1000yen
 岩波の月刊誌『科学』に連載されていた,宇宙物理学者池内教授の初エッセイ 集である.まとめて読むと一貫とした主張があったことが解る.しかも『来世紀 に向けての科学のあるべき姿を探る』と帯にあるように,ひとつの科学哲学を提 案しようとする色彩が強い.
 著者の言う「転回の時代」とは,デカルト主義的な発展を行ってきた科学あるい は科学的思考に対する物心二元論,還元主義に対する終焉であり,(人類は地球環 境をすでに環境として考える以上の存在になったし,科学の扱う対象も複雑系を含 むようになりすべてが単純な理論に還元できるわけではない),アメリカの加速器 SSCの建設中止に見られるような巨大科学の政治や文化との絡み合いである.カオス やフラクタルが,これからの物理の主役を担うだろう例として,しつこいほど既存 物理学との対極に担ぎ出されている.
 著者の主張に賛同するしないは別として,随所に散らばる著者の言葉はこの業界 の人間の琴線にひびく.大学教養課程に対しては『教養の物理で,質点の力学を学 んだ後の,剛体あるいは多体系の力学の味気なさ』と鋭く,異端の科学に対しては 『つい若者の独断を批判したくなるのだが,論理がきちんと通っていたらそれを励 ましてやる度量が必要』と鷹揚,オウム教事件に関しては『科学者は,何かが詰ま った箱の鍵を開ける錠前職人に似ている』と少し自己批判,文部省の大学改革に対 しては『科学は人間が創った一つの文化の一つの部門であるが,研究という個人的 でありながら普遍性をもつ行為の積み重ねであることを強烈に意識する必要がある』 と「手作り」と「スクール」の融合を強く求めている.最後に登場する寺田寅彦の 言葉を出すまでもなく,本書を通して語られるのは,科学あるいは科学者が持つべ き,現代に即した「良い意味での合理性」とは何か,という問いかけである.
 自らの研究を平易な言葉で語れないような研究者には,是非読んでもらい,研究 することの社会的な意義を問いただしてもらいたい.来年度の大学入試問題で,小 論文の題材としてとりあげる大学も多いことだろう.

9) 宇宙学者が「読む」,池内了,田畑書店,3100円
Uchu-gakusha ga yomu, IKEUCHI Toru, Tahata shoten, 3100yen
I bought this book as the last one in my twenties. Excellent book, I recommend. Comments will be sent later.
僕が20代の最後に買った本.いい本にめぐりあった,そう思う.紹介文はまた今度.


Back to Hisaaki's English front page | Japanese front page
Last Updated: February 16, 2000 / Updated: December 27, 1996