【惑星科学】太陽系惑星の新定義,惑星3つ増えるか

 今日の朝日新聞朝刊の一面トップは, 『太陽系の惑星、一気に3個増か 国際天文学連合が新定義』という記事だった. チェコ・プラハで開催中の国際天文学連合(IAU, International Astronomical Union)総会で,太陽系の惑星の新定義が提案されたことの報道である.IAU総会は,3年に一度 開かれる会議で,惑星の定義は今回の目玉とされ,その採決は24日の予定である.
 このサイトでもしばしば記録してきたが, 最近の観測技術の進展により,冥王星は結構小さいものだと分かってきて,同時に冥王星に匹敵する大きさの天体がいくつか発見され, 太陽系の惑星の定義が問題になってきた. 冥王星が存在する領域に,エッジワース・カイパーベルト天体(Edgeworth-Kuiper Belt Object)あるいは トランス・ネプチュニアン天体と呼ばれる 小天体の集合場所があり, 2005年には冥王星(直径2320Km,公転周期248年)よりも大きな直径を持つ天体 「2003 UB313」(直径2390Km,公転周期557年)が発見され、第十惑星か、と話題になったことは記憶に新しい. (2002年には,直径1200Km,公転周期285年のクワオアー (50000 Quaoar) ,2003年には,直径1700Km,公転周期10500年のセドナ(90377 Sedna)が発見されて話題になった.)これまで「惑星」と「小惑星」(最大のものは,セレス(1 Ceres)で直径950Km,公転周期4.6年 )の厳密な定義がなかったため, 今回の提案が注目されることとなっている.
 8/16 国立天文台astro topicsによれば, 「惑星の定義」として提案されたのは,次の条件.(原文は,IAU2006のページにあり.)
  1. 惑星とは、(a)十分な質量を持つために自己重力が固体としての力よりも 勝る結果、重力平衡(ほとんど球状)の形を持ち、(b)恒星の周りを回る天体 で、恒星でも、また衛星でもないものとする。
  2. 黄道面上で、ほぼ円軌道を持つ、1900年以前に発見された8つの Classical Planets と、それ以外の太陽系の天体を区別する。後者は、 すべて水星より小さい。また、セレスは 1. の定義から惑星であるが、歴史的 理由により、他のClassical Planets と区別するため、 Dwarf Planet と呼ぶ ことを推奨する。
  3. 冥王星や、最近発見されたひとつまたは複数のトランス・ネプチュニアン 天体は、1. の定義から、惑星である。Classical Planets と対比して、これら は典型的に大きく傾いた軌道傾斜と歪んだ楕円軌道を持ち、軌道周期は200年を 超えている。われわれは、冥王星が典型例となる、これらの天体群を、新し いカテゴリーとして、Plutons と呼ぶ。
  4. 太陽をまわる他のすべての天体は、まとめて Small Solar System Bodies と呼ぶこととする。

 重力平衡形状となるのは、地球の質量の約10000分の1(月の約150分の1)が目安. 小惑星セレスは(Dwarf Planetと呼ばれる)惑星に昇格.また, 冥王星の衛星といわれてきたカロン(Charon,直径1186km)も、共通重心が冥王星の外にあることから, 独立した惑星(二重惑星,どちらもPluton)となる.また,クワオアーとセドナは、セレスより大きいとみられるが、球形が維持できているかどうかが未確認などの理由で、今回は惑星とされなかった。IAUによると、こうした惑星候補は少なくともあと12天体あるという。
以上をまとめると, 太陽系には現在、12の惑星(水星、金星、地球、火星、セ レス、木星、土星、天王星、海王星、冥王星、カロン、2003UB313)があり、 このうち Classical Planets は8つ、 Dwarf Planetが1つ,Plutons が3つということになる.
 まだ,本決まりではないが,惑星の覚え方も,星占いもいろいろ変更になりそうだ.朝日新聞では,星占いは今後「守旧派と進化派とに2分するだろう」というある占い師のコメントも掲載していた.
朝日新聞より無断転載.