【大学情報】博士課程の定員減少,国立大補助金に格差案

最近は,大学改革関連のニュースが相次いでいる.
  • 博士課程の定員,初めて減少
    文部科学省によると,国立大大学院博士課程の2007年度の定員は1万4282人で前年度より118人の減. 定員を減らしたのは秋田大(26人),九州大(20人),神戸大と千葉大(各18人)など.減少は56年以来だが,このときは戦後の学制改革の影響だったため,実質的には初めてという.
    政府は「科学技術創造立国」を掲げて大学院生の倍増計画を進めてきた.国立大博士課程の定員は91年度の7589人からほぼ倍増したが,一方で,博士の受け皿となる大学や公的研究機関の研究職の数は増えず,06年3月に博士課程を修了した人の就職率(企業なども含む)は6割程度にとどまった. 就職難から学生の「博士離れ」が始まり,一部の大学が定員の削減に踏み切った構造.関係者からは「現状を放置すれば優秀な人材が集まらなくなり,日本の国際競争力が低下しかねない」と危惧されている.
    2007/5/26 朝日新聞 就職難で「博士離れ」か 博士課程の定員,初めて減少
    2007/5/22 朝日新聞 博士,漂流 国策で急増,狭い就職口

  • 国立大学補助金に格差 財務省検討
    財務省は国立大学への補助金である運営費交付金について,従来の配分方法に競争原理加味した試算をまとめ,財政制度等審議会(財務相の諮問機関)に提示した.
    試算では,教職員数など規模によって大枠が決まる現行の仕組みを改め,予算配分でも研究成果など実績を重視する必要性を示している.そして,研究提案の内容などに応じて決まる科学研究費補助金の配分割合に基づくと,東大や京大など主に大規模な総合大学で交付額が増える一方,全体の85%に当たる74の大学法人は減額となり,一律的配分の構図が崩れる結果となった.財政審では配分方法見直しの方向では一致したものの,成果主義だけを軸とした改革には異論も出た.
    2007/05/22 四国新聞社 国立大85%減額交付に−競争型導入で財務省試算

    伊吹文明文部科学相は,この財務省の試算について,「キリギリス的で危険な発想」と批判した. 「すぐに産業化できるところにばかり金を分配していくと,将来の応用に結びつく基礎に回らなくなり,そのうち応用ができる人がいなくなる」.
    2007/5/26 日経新聞 伊吹文科相,国立大交付金の財務省試算を批判

  • 国立大学費に格差 財務省検討
    全国の国立大学で一律になっている授業料や入学金について,財務省は,大学や学部の独自の教育内容や経費に応じて,格差をつけられるようにする方向で検討に入った.現行制度では「標準額」から最大20%増を上限に各大学が設定する仕組みだが,横並び意識が強く大半は標準額(年額53万5800円)と同額に設定している.
    設備にコストがかかる医歯系や理系の学部は,これまでより高くする一方,文系を安くするなど学費設定に経営判断と競争原理が働くようにし,従来の体系を抜本的に見直す.ただ授業料に格差をつけることには,教育界から「高等教育の機会均等」を損なうなどとして,反発が出そう,とのこと.
    2007/5/26 東京新聞 国立大学費に格差 財務省検討 学部間も経営判断で

  • 国立大を大規模再編 教育再生会議報告案
    読売新聞は,政府の教育再生会議が近くまとめる第2次報告の最終案の全容を報道した.第2次報告は「公教育再生に向けた更なる一歩と『教育新時代』のための基盤の再構築」と題し,〈1〉学力向上(ゆとり教育見直しの具体策)〈2〉心と体 —調和の取れた人を育てる(徳育の教科化,親の学び・子育ての応援)〈3〉大学・大学院の再生——の3つの柱に各5つ,計15提言.
    大学・大学院改革では,特に国立大学の改革案に重点を置いた.「教員の年功序列型給与システムの打破」「教授会万能の意思決定システムの廃止」「事務局改革による経営の効率化」などを例示した.一方で,優秀な学生への支援策として,奨学金の拡充や学費免除を提案.大学入試改革では,入学年齢の弾力化や国立大学の入試日分散・複数合格などの検討を打ち出した.
    2007/5/26 読売新聞 国立大を大規模再編,入学定員減も…教育再生会議報告案