【環境問題】地球温暖化「今後5年が最後の機会」

先週は,地球温暖化に警鐘を鳴らすニュースが相次いだ.
  • 「今後5年が最後の機会」WWF
    世界自然保護基金(World Wide Fund for Nature,WWFWWFジャパン)が,「今後5年間が地球温暖化防止の最後の機会だ (Five years the key to planet's future)」とする報告書を発表した.
    世界人口が90億人となる2050年までの二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出状況を予測.エネルギー消費の効率化,再生可能なエネルギーの普及,天然ガスの利用拡大といった既存の技術を総動員するような,国家的な合意が今後5年以内に実現すれば,温暖化防止は「まだ可能」と指摘した.予測では,2050年までに(1)省エネ技術の徹底した追求によりエネルギー消費を39%抑制(2)風力,太陽光など再生可能なエネルギーで需要の70%を供給−などが実現.CO2吸収の技術進歩や,水素エネルギーの開発も見込んでいる.
    2007/5/15 京都新聞(共同通信)「今後5年が最後の機会」温暖化防止でWWFが警鐘
    2007/5/15 WWF Five years the key to planet's future

  • 日本周辺海域,水温上昇,世界の最大3.2倍 気象庁
    日本周辺海域の海面水温の過去100年当たりの上昇率は0.7-1.6度と,世界全海洋の0.5度に比べ,最大で3.2倍に上ると,気象庁が15日発表した.日本海中部が最も高く,ユーラシア大陸の気温上昇の影響が強いという.背景には地球温暖化があり,急ピッチの上昇傾向が続いた場合,漁業や生態系への悪影響が懸念される.
    気象庁の高槻靖海洋気象ブイロボット班長らは,1900年から2006年までに,主に商船が観測した海面水温の年平均について,平年値(1971ー2000年平均)との差を調べ,100年当たりの上昇率に換算した.
    その結果,日本海中部が1.6度,四国・東海沖北部が1.3度,日本海南部と東シナ海北部(九州西方)が1.2度,東シナ海南部(奄美・沖縄周辺)が 1.1度と,日本の陸上気温の上昇率(1.1度)と同程度以上だった.関東南方の1.0度,四国・東海沖南部の0.8度,先島諸島周辺の0.7度も,世界全海洋を上回った.
    2007/5/15 時事通信 海面水温上昇,世界の最大3.2倍=日本周辺海域,過去100年で−気象庁 
    2007/5/15 気象庁 日本周辺海域の海面水温の長期変化傾向について 

  • 絶滅の恐れ高い10種 WWF,商取引規制を要求 世界自然保護基金(WWF)は15日,来月オランダで開催されるワシントン条約締結国会議に向け,サメなど絶滅の恐れが非常に高い動植物10種のリストを公表し,優先的に商業取引禁止などの措置を取るよう各国に求めた.
    • 以下の5種は食用や伝統薬,宝飾品に利用するため乱獲され,個体数が激減しているとして,商取引を規制する同条約の付属書への掲載を求めた.
      ノコギリエイ(Sawfish)やアブラツノザメ(Spiny dogfish),ヨーロッパウナギ(European eel),Porbeagle,Red and pink coral
    • 以下の5種は既に付属書に掲載されているのに,密猟や違法伐採が絶えないとして,締結国に取り締まりを強化するよう訴えた.
       トラ(Tiger),ゾウ(Elephants), アジアサイ(Asian rhinos),大型類人猿(Great apes),マホガニー(Bigleaf mahogany)
    2007/5/16 京都新聞(共同通信)絶滅の恐れ高い10種を公表 WWF,商取引規制を要求
    2007/5/15 WWF The top 10 most traded species

  • 北極の海氷,予測超え減少 今世紀前半にも消失か 米コロラド大/米国立大気研究センター(NCAR, National Center for Atmospheric Research)などの研究チームは, 1953−2006年に北極で実施された人工衛星や,船舶,航空機による観測データを分析,海氷で覆われた面積を算出した結果として, 「北極の海氷は,気候変動に関する政府間パネル(IPCC, Intergovernmental Panel on Climate Change)の予測より急速に減少している」との報告を 米地球物理学連合の学会誌に発表した.
    IPCCの最新報告は,早ければ今世紀後半に,北極の海氷が夏に消滅すると予測した.だが,研究チームは「実際の観測では,最も面積が小さくなる夏の海氷面積は,IPCCの予測より約30年速いペースで小さくなっている」と指摘,消滅は今世紀前半にも起こる可能性が出てきた. IPCCの予測の基になった複数のコンピューターモデルでは,この間の減少幅は平均で10年当たり2.5%,最大でも同5.4%にとどまっているが,研究チームの結果では, 海氷が最も小さくなる9月の観測データを見ると海氷面積は,10年当たり7.8%のペースで減少したことが判明した.
    2007/5/16 京都新聞(共同通信)北極の海氷,予測超え減少 今世紀前半にも消失か

  • 南大洋はCO2吸収ゼロ 8カ国調査 二酸化炭素(CO2)の吸収源と考えられてきた南大洋(南緯45度以南)が,最近はほとんど吸収していないとみられることが国際チームにより報告された.人間活動により強まった風が,地球規模で大気や海洋の循環を変化させ大気から海洋へのCO2吸収を妨げているという.
    米国などが1960年前後から実施した観測から,南大洋は海洋全体の約30%に当たる年間約6億トンのCO2を吸収しているとされた.ところがシミュレーションにより吸収量がその半分程度と試算され,正確な評価が求められていた.
    国際研究チームは,1981−2004年に南極・昭和基地など南大洋に囲まれた11地点を含む世界40地点で精密に測定された大気中のCO2濃度を解析.その結果,南大洋のCO2吸収力は,平均して年間約800万トンずつ弱まり,現在ではほとんど吸収していないという.この現象は,(1)温暖化やオゾン層破壊による気温変化で南大洋での風が強まった,(2)それによって海の循環が変化し,CO2濃度が高く吸収する余力が乏しい深海の海水が上昇,海表面付近に広がった——と想定すると,説明できるという.
    研究チームの東北大の中澤高清氏は「南大洋が吸収から放出に転じる可能性がある.海がCO2を吸収する前提で進められている温暖化対策を見直す必要が出てくるのではないか」と話している.
    2007/5/18 毎日新聞 南大洋は吸収ゼロ 温暖化対策急務に 8カ国調査
    2007/5/18京都新聞(共同通信)海のCO2吸収量が減少 温暖化の悪循環の可能性
    Science, Published Online May 17, 2007, C. Le Quere et al,   Saturation of the Southern Ocean CO2 Sink Due to Recent Climate Change
おまけ. 世界最大の民間自然保護団体「WWF」の変わった広告