【重力物理】1桁小さなスケールでの重力理論の検証

スタンフォード大学の Geraci らは,重力法則の短距離での計測実験結果をプレプリントの形で発表した. これまで,Newton の重力法則についての検証実験は,ねじれ秤によるものが主流であり, 0.1 mm 以下のスケールでの 精度のよい実験は行えないために,さまざまな重力の 補正理論が提案されている.今回の実験は,湯川型ポテンシャル 
G ( m_1 M_2 / r^2) ( 1 + alpha exp(-r / lambda ) )
の表式で,5-15 x 10^{-6} m のスケールで, lambda = 10^{-6} m に対し,| alpha | > 14,000 の 制限を示すものである.

実験は, 0.25mmの長さのシリコンの カンチレバー (cantilever) (水泳の飛び込み台のような片持ち梁)に,1.5 x 10^{-6} gのおもりを載せ,25 x 10^{-6} m 離れたところにあるおもりからの重力を干渉計を使って調べた.装置全体を熱振動が抑えられる程の低温にすることにより,10^{-18} N の大きさの重力を直接計測することが可能になったという.

最近は,重力以外のすべての力が4次元空間内に押し込まれ,重力だけが高次元を伝播する,というブレイン時空モデルが積極的に研究されているが,今回の実験結果は,このブレインモデルの高次元のコンパクト化を決めるモジュライ場(dilaton, Yukawa messengers, strange modulusなど)に制限を与える領域にある.

PhysicsWeb 2008/03/05

A. A. Geraci et al, Improved constraints on non-Newtonian forces at 10 microns arXiv:0802.2350