7月22日に,トカラ列島から硫黄島にかけて,日本では46年ぶりに皆既日食が見られる.詳しい情報は,国立天文台のページや,そこからリンクされている情報ページに譲るとして,天文教育業界でも毎日メーリングリストで日食情報が交換されている.
そこで話題になった,
「完全ガイド 皆既日食」(武部 俊一,朝日新聞出版)という本が,日食を追いかける一個人の記録として,実によく書かれているので,ここで紹介しておきたい.
筆者は,新聞記者だが,この18年間に10回も皆既日食を追いかけた「日食ハンター」である.冒頭で「宇宙の中にいる自分をこれほど実感させてくれるものはない」「天と地と人の一体感」と日食を定義し,今回の日食の説明や筆者の体験した日食記録のほかに
- 報道の中の日食
- 科学の中の日食
- 切手の中の日食
- 日本史の中の日食
- 世界史の中の日食
- 文学の中の日食
- 映画の中の日食
- 皆既日食がなくなる日
例えば日本史の章では,日本書紀に出てくる天照大神(太陽の女神)が岩屋に閉じこもってしまい,困った神々が岩屋の前で祭りを催した,というくだりを日食とみなせば,158年か248年,454年か522年か,といった斎藤国治の研究成果を紹介している.
最後の章では,月の軌道がだんだんと地球から遠ざかることによって,6億1600万年後には皆既日食がなくなること,次の1000年間に子孫が皆既日食を見やすくするには九州に住み着くのがよい話などが書かれている.
(冗談ではなく)とても役立つ話が満載だ.