【基礎物理】泡は初期条件を記憶する

気泡がノズルから分離し始めるときに,形状は一瞬,尖った形になる. このような尖った形は,ノズルの対称性がよければ,初期条件によらず発生するものと 考えられていた.しかし, このpinch-offの瞬間を 毎秒13万コマの高速撮影をすることにより, 気泡の形状は,ノズルの形・大きさ・傾きの角度等に依存することが報告された. (N.C. Keim et al, Phys. Rev. Lett. 97, 144503 (2006) ).

他の特異点現象に見られるように, 気泡の分離直前に引き延ばされる首(neck)の 最小半径は分離するまでの時間に比例するが,表面張力が分離を阻止する働きにより初期の軸状の非対称性形状が分離現象を通じて記憶されるという.

実験したKeimは,PhysicsWebに,このような特異的な形状の記憶は,ブラックホール形成でも 発生するのではないか,と述べたという.

論文のアブストラクトの締めには, "In the last stages, the air appears to tear instead of pinch." とある.tearは滴,涙,裂け目の意.pinchはひとつまみ,窮地,窮地,盗みの意.なかなか奥が深い.

N.C. Keim et al, Phys. Rev. Lett. 97, 144503 (2006) Breakup of Air Bubbles in Water: Memory and Breakdown of Cylindrical Symmetry
10/18 PhysicsWeb, Bubbles never forget