【宇宙物理】最も明るくて近いマイクロレンズ現象

10月下旬に新しい変光星として報告されたカシオペア座の星は, 重力レンズ効果(マイクロレンズ効果)による一時的な増光であったという結論で, 観測結果が収束しつつあるようだ.

マイクロレンズ現象は,光る星の手前を別の星が横切るときに, 光が時空の歪みによって曲がることにより,一時的な増光を 起こす現象である.大小マゼラン銀河の星をターゲットにして,各星の光度を日々 測定することにより,これまでいくつものマイクロレンズ効果が観測され, ダークマターの存在量などの推定に結びついている.変光星と異なるのは, 光のスペクトルの特徴が変わらずに明るさだけが変動し,しかも一過性であること である.

今回の観測で注目を集めているのは,通常11.8等の明るさの星の光度が,

  10月25.538日   10.7等
      27.409日   10.5等
      30.411日    8.8等
      31.469日    7.5等
と,50倍以上の明るさになったこと.さらに 日本のアマチュア天文家による発見報告であったこと, そして,レンズ物体への距離が 1 kpc と,信じられないくらい 近い距離であることである.

The Astronomer's Telegram 931 2006/11/3 The bright new variable in Cassiopeia - a microlensing event?
The Astronomer's Telegram 942 2006/11/12 VAR CAS 2006, A Nearby Microlens?
The Astronomer's Telegram 943 2006/11/14 Microlensing of GSC 3656-1328
VSOLJ ニュース 162 2006/11/16 多胡さん発見の変光星はマイクロレンズ現象?