【書籍紹介】「現代の天文学」刊行開始

日本天文学会は,今年創立100周年を迎えている.学会のホームページには,一切そのようなアナウンスはないが,おそらく人員不足で手が回らないからであろう.天文学会は,学会とは名乗るものの一般の方でも会員になることができる.現在の会員数は,天文学研究者と天文愛好者を合わせて約3000名だという. 会員に郵送される「天文月報」は,一般向けレベルの紹介記事が主で,研究者は特別会員費を払うことにより「欧文研究報告 PASJ」も郵送されてくる.(一般の方の中には,日本天文学会ビルがどこかにどかんと建っていると想像する方もいるらしいが,実際には,三鷹の国立天文台内の一室である.10数年前に一度訪ねたときは,床がみしみし唸るような建物だった.)

第100巻第1号となる今年1月号の天文月報では,100年前の天文月報の縮小版を付録として付けるという粋な企画を行った.内容はともかく,天文月報の題字が当時から変わっていないことにとても驚いた.現在,100周年を記念したロゴを募集中(〆切 4月10日)のようである.詳しくは,日本天文学会のホームページまで.

さて,100周年を企画して,天文学会は,日本評論社より, 「シリーズ現代の天文学」全17巻の刊行を開始した.このような天文学のシリーズは, 1980年代に刊行された恒星社の「現代天文学講座」以来のようだ. このほど,第1巻「人類の住む宇宙」が入手できた.毎月1冊の予定で,来年まで刊行が続く. 私は現物を見る前から全巻予約してしまい,レベルに不安だったのだが,執筆陣を信頼して正解であった. 第1巻は入門的な内容であるからか,ざっと見たところ,意欲ある高校生から大学初年度以上を対象にして非常に読みやすい.必要な数式は登場している. 何より,最新の情報であることが嬉しい.冥王星は惑星ではなく小天体としてあっさりと記載されていたり,太陽系外惑星の探査方法やCOBE衛星による観測での2006年のノーベル賞受賞まで,「教科書」として記載があることは貴重である.第2巻以降は,大学生・大学院生向けの展開になるのだろうか.個人的には数式がんがんな内容を期待したいのだが.

ところで,第1巻の初版第1刷には誤植が多かったようである.全巻予約者には第2刷ができるまで郵送されて来なかった.《日本評論社》のページに正誤表が掲載されている.

「シリーズ現代の天文学」(日本天文学会編,日本評論社)刊行情報  2009/8/20 現在

第1巻人類の住む宇宙/岡村定矩ほか編2007年1月刊 《日本評論社》 《amazon.com》 《bk1
第2巻宇宙論(1) 宇宙のはじまり/佐藤勝彦+二間瀬敏史 編 2008年1月刊 《日本評論社》 《amazon.com
第3巻宇宙論(2) 宇宙の進化/二間瀬敏史 ほか編 2007年9月刊 《日本評論社》 《amazon.com
第4巻銀河(1) 銀河と宇宙の階層構造/谷口義明 ほか編 2007年10月刊 《日本評論社》 《amazon.com
第5巻銀河(2) 銀河系/祖父江義明ほか編2007年4月刊 《日本評論社》 《amazon.com》 《bk1
第6巻星間物質と星形成/福井康雄ほか編 2008年9月刊 《日本評論社》 《amazon.com
第7巻恒星/野本憲一 ほか編2009年7月刊 《日本評論社》 《amazon.com
第8巻ブラックホールと高エネルギー現象/小山勝二ほか編2007年6月刊 《日本評論社》 《amazon.com
第9巻太陽系と惑星/渡部潤一ほか編 2008年2月刊 《日本評論社》 《amazon.com
第10巻太陽/桜井隆 ほか編2009年3月刊 《日本評論社》 《amazon.com
第11巻天体物理学の基礎(1)/観山正見ほか編 《》 《》
第12巻天体物理学の基礎(2)/観山正見ほか編 2008年5月刊 《日本評論社》 《amazon.com
第13巻天体の位置と運動/福島登志夫編2009年1月刊 《日本評論社》 《amazon.com
第14巻シミュレーション天文学/富阪幸治ほか編 2007年8月刊 《日本評論社》 《amazon.com
第15巻宇宙の観測(1) 光・赤外天文学/家正則ほか編2007年7月刊 《日本評論社》 《amazon.co.jp
第16巻宇宙の観測(2) 電波天文学/中井直正ほか編 2009年8月刊 《日本評論社》 《amazon.com
第17巻宇宙の観測(3) 高エネルギー天文学/井上一ほか編2008年10月刊 《日本評論社》 《amazon.com