【数理科学】フィボナッチ数列はエネルギー極小を実現か

フィボナッチ数列(Fibonacci sequence)は,前の2項の和を次の項とする(a_n=a_{n-1}+a_{n-2})というルールで形成される数列であるが,その公比 a_n/a_{n-1} が黄金比 (1+sqrt{5})/2 になるなどの性質がある他,自然界でも多く登場することが知られている.

北京のCaoらは,12 micro mの大きさのいろいろな形の銀の核にSiO_2の膜を張る実験を応力工学(stress engineering)的な観点から行い,フィボナッチ数列の起源を説明できるのではないか,という論文を発表した.形状を厳密に保ちながら,冷却することによる自発的なパターン形成を観測すると,膜が球状の形に誘導されるときは三角形の応力パターンが膜に生じ,円錐状に誘導されるときは螺旋状の応力パターン(フィボナッチ・スパイラル)が生じたという.

1904年にJ.J. Thomsonは,誘電体上に荷電粒子がエネルギー最小の状態で分布するときのパターン形成に関する問題提起をして以来,物理学者は三角形状のパターンになるだろうと予測してきた.今回の実験でCaoらは,同様のパターンが球状物体で見られたことから,円錐上でのフィボナッチ・スパイラルの確認は同様にエネルギー極小を実現しているからではないか,と考えている.

自然界に多く見られるフィボナッチ数列の起源に対しては「おそらくエネルギーを最小にするからだろう」とは長く考えられていたが,具体的な説明が試みられたのは初めて(PhysicsWeb)とのこと.

2007/4/25 Physics Web Fibonacci spirals in nature could be stress-related
C.Li, A. Ji & Z.Cao, Appl. Phys. Lett. 90, 164102 (2007) Stressed Fibonacci spiral patterns of definite chirality