【惑星科学】太陽系外惑星に水蒸気

太陽系以外の惑星から初めて水を検出したとする研究が発表された. 論文発表したのは,米Lowell天文台のTravis Barmanで,ペガスス座の方向約150光年の距離にある系外惑星「HD 209458b」.この系外惑星は,地球から見て恒星の前を横切る(トランジット)現象が初めて観測された有名な惑星であり,ガス惑星であることが知られている(従って生命の存在は難しい).

HD 209458bから恒星までの距離は,地球から太陽までの距離の20分の1以下であり,惑星は灼熱の環境にある.しかし,理論的には惑星の大気には水蒸気が含まれているはずであり,観測が続けられていた.これまでの,トランジットの観測結果と理論との比較では水蒸気を含む大気モデルには否定的な結果が出ていたが, Barmanは,恒星の方の成分,惑星大気に含まれる微粒子,さらに大気中のガスが熱や光から受ける影響などを考慮し,新たなモデルを構築.HSTの観測結果と照らし合わせた結果,水蒸気を含むモデルは観測と一致し,含まないモデルは一致しなかったという.

NASAの赤外線天文衛星スピッツァーは,最近,HD 209458bでは水蒸気が検出されなかった,という結論を出していた.これは, 惑星が恒星の後ろに隠れたときの光を,並んでいるときの光から引き算する(トランジットの逆)方法を用いたものだった.これに対しBarmanは論文中で「スピッツァーから得られたのはHD 209458bの『昼』側の大気が放つ光だけである」として,そうした条件では水が存在したとしても検出できないことを示唆した.Barmanが使ったデータは,「昼」と「夜」の境目にある大気を通過した恒星の光.

2007/4/23 朝日新聞太陽系外惑星に水蒸気初確認? 米天文台
2007/4/17 AstroArts 系外惑星の大気から初めて「水」の証拠
2007/4/10 Lowell Observatory Press Room Water Identified in Extrasolar Planet Atmosphere
arXiv:0704.1114v1 [astro-ph],T. S. Barman, "Identification of Absorption Features in an Extrasolar Planet Atmosphere"