【宇宙物理】重力レンズ数が宇宙項の存在を示唆

クエーサーの重力レンズ現象を数えることで,宇宙を加速膨張している要素が宇宙項の性質に近いことが,日本天文学会で発表され,記者発表された.Stanford大学と理化学研究所を含むグループの研究で,スローン・デジタル・スカイ・サーベイ(SDSS, Sloan Digital Sky Survey)で発見されたクエーサーのうち、約2万3000個を調べ,その内,11個が手前の銀河による重力レンズ効果を受けていることを確認した.

宇宙が加速膨張している原因は不明であり,暗黒エネルギー(ダークエネルギー)として称されている.アインシュタイン方程式に宇宙項を加えることで説明するのか,あるいは「斥力を働かせる物質」(クインテッセンス)を仮定することで説明するなどのアイデアが出されている.

暗黒エネルギーによる宇宙の加速膨張は遠方の天体(クエーサー)までの距離を増やすため、暗黒エネルギーの少ない等速膨張や減速膨張の宇宙に比べて視線上に銀河が存在する確率、すなわち重力レンズ現象が引き起こされる確率が高くなる. 今回,これまでにない大規模な統計調査により,11個の重力レンズが見つかったが,もし暗黒エネルギーがない場合はせいぜい1、2個と予想されていた.暗黒エネルギーのモデルも,「空間自体が一定の反発力を持っている」とする宇宙項モデルが好ましいと結論づけている. 結論自体は突飛なものではなく,これまでの観測結果の流れをサポートするものと言える.

理化学研究所 プレスリリース
スタンフォード大学 大栗氏
2007/09/27 AstroArts