【宇宙物理】ガンマ線バーストGRB070201に重力波なし

アメリカの LIGO 重力波レーザー干渉計グループは,初めての新事実となる科学的な論文をリリースした.ガンマ線バースト天体 GRB070201 の発生時に有意な重力波が観測されなかった,という内容で,残念ながら,重力波が発見された,という内容ではない.

ガンマ線バーストには2つのタイプがあり,バーストが2秒から数分持続する long 型と,数ミリ秒から2秒までの short 型と区別される.前者は,超新星残骸が起源であるとされているが,後者の起源はまだ謎である.また,スペクトルに高エネルギーの成分が多いか少ないかによって,「硬 (hard)」「軟 (soft)」という区別もある.

GRB070201 は,アンドロメダ銀河(M31)の腕の方向から観測された,short & hard のガンマ線バーストであった.この場合のモデル天体は, として有力とされるのは,中性子星やブラックホールの合体現象か,あるいは軟ガンマ線リピータ(SGR)フレアの2種類である.前者の合体現象であれば,重力波放出を伴うと考えられるため,ガンマ線バーストが観測された時刻(近辺)に重力波も観測されるかどうかの検証が助けになる. LIGOの重力波レーザー干渉計では, GRB070201 が観測された前後 180 秒間には重力波の痕跡は見られなかった.

より正確には,今回のデータからは, GRB070201 の起源として,M31に存在する 1 M_sun < m_1 < 3 M_sun と 1 M_sun < m_2 < 40 M_sun の質量からなる連星の合体の可能性は 99 % の信頼度で棄却された.もし,起源が中性子星連星の合体とするならば,天体までの距離は 90 % の信頼度で  D < 3.5 Mpc が除外される. 逆にもし,起源天体が M31 にあるとするならば,(等方的に広がるとした場合の)重力波の強さは,150 Hz付近の周波数で 100 ms 間に 4.4 x 10^(-4) M_sun c^2 (7.9 x 10^(50) ergs) を超えないエネルギーであったはずである.これは,SGRの可能性を否定するものではない.

LIGO Scientific Collaboration,arXiv:0711.1163v2 [astro-ph]
PhysicsWeb 2008/01/16 Cosmic explosion, but no gravitational waves