しかし受信される重力波の振幅は非常に小さいと予想されるため,干渉計の観測データから ノイズを除去してどのように重力波波形を抽出・特定するか,というデータ解析研究の確実性に 注目が集まっている.
NINJA
数値シミュレーションから得られたデータを,ノイズデータに注入し, データ解析グループが正しく注入されたデータを抽出できるか,という実験プロジェクトNINJAが 昨年発足し,その初めての論文がpublishされた.
Testing gravitational-wave searches with numerical relativity waveforms: Results from the first Numerical INJection Analysis (NINJA) project
Benjamin Aylott, et al.
Class. Quantum Grav. 26 (2009) 165008 (51pp)
arXiv:0901.4399
NINJAとは,Numerical INJection Analysis (数値注入解析)という言葉の頭文字ということになっているが,隠れた忍者を探し出す,という心憎いプロジェクト名である.10の数値相対論グループと,9のデータ解析グループの共同プロジェクトで,この論文はプロジェクトの目的・全体像と,テスト結果・将来計画を論じる長い論文になっている.NINJAプロジェクト自体は, ホームページを開設しており, プロジェクトの概要だけなら,会議のproceedingsとして,
Status of NINJA: the Numerical INJection Analysis project
Laura Cadonati et al
Class. Quantum Grav. 26 (2009) 114008 (13pp)
arXiv:0905.4227
という論文が出ている.
Samurai
その一方で,NINJAを意識して,Samuraiという名前をつけたプロジェクトも登場した. こちらは,数値相対論グループ同士で,同じ初期条件でシミュレーションを行ったとき,きちんと 同じ重力波波形を計算結果として出しているかどうかを確認するプロジェクトである.
The Samurai Project: verifying the consistency of black-hole-binary waveforms for gravitational-wave detection
Mark Hannam et al
Phys. Rev. D 79, 084025 (2009)
arXiv:0901.2437
5つの異なる数値コードを比較した結果を議論している. かつてのApple with Appleプロジェクトを進化させた形だ. 残念ながら,Samuraiは何の略語でもなく,単にNINJAに対抗して,というネーミングである.
どちらも重要な試みだと思うが,忍者と侍,果たしてどちらが長生きするだろうか.