【基礎物理】Fermi研の加速器Tevatron,「新しい力を発見」と発表

フェルミ国立加速器研究所(イリノイ州)の大型加速器テバトロン (Tevatron) を用いたCDF実験グループは,これまでの標準的な素粒子理論「標準模型 (standard model)」では説明できない新しい粒子(力)の存在を示す実験結果が得られた,と発表した.

  • 2011/4/4 プレプリントサーバに投稿された論文
    arxiv:1104.0699 CDF Collaboration, T. Aaltonen, et al., "Title: Invariant Mass Distribution of Jet Pairs Produced in Association with a W boson in ppbar Collisions at sqrt(s) = 1.96 TeV"

テバトロンはシカゴ郊外にある 1周 6km の素粒子加速器で,1 TeV (10^{12}eV) にまで加速した陽子と反陽子を正面衝突させる実験を行っている.Collider Detector at Fermilab (CDF) と命名された素粒子検出器 を用いる実験グループの目的は,宇宙初期の高エネルギー状態での素粒子・相互作用の解明である.陽子・反陽子の衝突によって生成される W-ボゾン や jet を観測している.今回の発表は,120-160ギガ電子ボルトの範囲で,「標準模型」から想定される量より多い粒子のイベント (excessと表現) が観測された,というもの.素粒子のトップクォーク(質量 170+-2ギガ電子ボルト)よりやや軽い質量のレンジで,質量の起源とされ発見される期待がかかっている「ヒッグス粒子」や,暗黒物質の候補として考えられている「超対称性粒子」とも別のレンジである.

報告されたexcessは,量にして,想定される粒子数を10000とすれば253の増加.予想された量からのズレは,標準偏差で 3.2 である.まだ標準モデルで説明できる確率は,0.076 % あるわけだが,言い換えれば99.93 % の確率で新種の素粒子(力)の発見,となる.素粒子物理学の慣例では,確率 99.9999%での確認で「発見」とされるため,今後は,ヨーロッパの LHC加速器のチームとも連携して実験を進めるそうだ.

2011/4/6 New York Times, At Particle Lab, a Tantalizing Glimpse Has Physicists Holding Their Breaths
2011/4/6 Popular Science, Fermilab Physicists Have Detected A Possible New Particle or New Force
2011/4/7 IO9, Has Fermilab really discovered an entirely new subatomic particle? And could this change the universe?
2011/4/9 朝日新聞,ノーベル賞級!? 現代物理学で定義できない粒子発見か