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最近話題になった数理・物理・宇宙関係のニュースから




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2003/12/25

2003/12/18 物理学,2003年の話題

師走で,今年一年を総括する記事が目に付くようになった.今回は,アメリカ物理学会の PhysicsNews が選んだ 「THE TOP PHYSICS STORIES OF 2003」 を紹介.top3は当サイト既報でもあり,ひとまず安心.物性関連で逃したニュースは, このサイト立ち上げ前のものも多かったのでご容赦を.
refs
top 3 ウィルキンソン宇宙背景輻射非等方性探査衛星(Wilkinson Microwave Anisotropy Probe, WMAP), スローンデジタルスカイサーベイ(Sloan Digital Survey)をはじめとする,数々の宇宙観測が, これまで不定だったハッブルパラメータ・宇宙年齢・ダークエネルギー比などの宇宙論パラメータを 決定したこと. PhysicsNews
PhysicsNews
当サイト既報
top 3 素粒子の最小単位であるクォークは2個(mesons)ないし3個(baryons)の組み合わせで 物質を構成すると考えられていたが, SLAC (US) や KEK (Japan) の実験により,"tetraquark" または "pentaquark" の可能性が知られるようになった. PhysicsNews
PhysicsNews
当サイト既報
top 3 Bose-Einstein凝縮体を対になったFermi原子気体で実現.超伝導・超流動状態の解明へ の鍵になると期待されている. PhysicsNews
当サイト既報
top 12 木星によるクェーサーJ0842+1835の重力レンズ効果を用いて,光と重力の速度が一致している, という報告がされたが,本当にそう結論付けられるのか論争を呼んだ. PhysicsNews
当サイト既報
top 12 化学反応の研究に attosecond (10^{-18}秒)レーザーの利用技術導入. PhysicsNews
top 12 赤血球やDNA分子のような生体粒子の生成に,微小流体力学が応用された. PhysicsNews
top 12 左巻き物質からできている負の屈折率をもつ物質で光の収斂実験を再現, 理論家の反論を封じる. PhysicsNews
top 12 米国 Sandia 国立研究所の Z Machineで,核融合実験が初めて実現された. PhysicsNews
top 12 重力波レーザー干渉計LIGOグループが,初めての論文発表.重力波の検出はまだだが,重力波発生頻度の 上限を与えた. PhysicsNews
当サイト既報
top 12 静止している一原子をベースにしたレーザー技術が出現. PhysicsNews
top 12 正負両方の屈折率に変化できる("amphoteric" refraction)媒質が登場. PhysicsNews
top 12 単一波長しか通さない液晶(photonic crystals)中での衝撃波効果やエネルギー遷移の解析. PhysicsNews PhysicsNews

2003/12/04 中性子星連星を新たに発見 PSR J0737-3039

22 ms周期のパルサーであるPSR J0737-3039の発見が報告された. 主星の質量が太陽質量の1.35倍、伴星が1.24倍である中性子星連星であるとされ, 公転周期は2.4時間で、近星点の進みが年16.88度,合体がおよそ85 Myr後と予想される 高度な相対論的な天体である. (詳細な質量決定にはあと1年の観測が必要.スピンの相対論的歳差の周期は75年で これまでの4分の1.年齢の推定値100万年を使うと、 公転軌道の初期周期は3.3時間、当初離心率は0.119.現在の離心率はすでに25% 小さくなっている). これまでHalse-Taylerによって発見された連星中性子星を もとに,近接連星系の合体による重力波発生の頻度が推定されてきたが, PSR J0737-3039の比較的低い電波輝度と予想される合体までの短い時間スケールの2点は, これまでの連星中性子星の合体頻度の割合を一桁増加させることになるという.

M. Burgay et al, Nature 426, 531-533 (4-December 2003)
2003/11/15 Belle が新粒子発見 −新しいタイプの中間子か− 「mystery meson」

高エネルギー加速器研究機構(KEK)で実験中の国際共同研究グループ Belleが,新しいタイプの粒子を発見したと 発表した. X (3872) と名づけられたこの粒子はおよそヘリウム原子1個分の重さを持ち, 生成後およそ1兆分の1のさらに10億分の1秒ほどで他の安定な粒子に崩壊する. この程度に重い粒子の寿命としては異常に長い. これまで考えられている粒子分類方法では説明するのが難しいという. KEKのBファクトリー加速器 (KEKB) で生成されたおよそ1億5000万個のB中間子 反B中間子対の崩壊の中から36例見つかった. すでに最近米国 フェルミ国立研究所で稼働中の 世界最高エネルギーを出すテバトロン加速器でのCDF実験がBelleグループの発見を 確認している. 新粒子は「mystery meson」と呼ばれている.
 通常「中間子」と呼ばれる粒子は1個のクォークと1個の反クォークが「強い力」で結びつけられている. 新粒子はD中間子と呼ばれる粒子2個が分子のように結びついた状態(4個のクオークで構成)と考えられ, 一部の理論家がその存在を予想していたという. Phys. Rev. Letter誌に投稿中(hep-ex/0309032) とのこと.

KEK プレスリリース
physicsweb
11/14 朝日新聞
2003/11/06 ボイジャー1号,太陽系外へ

1977年9月に打ち上げられた,惑星探査機「ボイジャー1号」は現在地球から約130億キロ (太陽からおよそ85AU)先を航行中であるが,太陽風(太陽から放出される荷電粒子の流れ)の 測定データから, 太陽風の影響が及ぶ限界点である「ターミネーション・ショック」(末端衝撃面)を通過 しつつあることがわかった.ボイジャーは,太陽系の外縁を越える初めての宇宙探査機になる.

11/6 毎日新聞
11/6, Nature vol. 426 (review)
2003/11/05 「最も近い小銀河」発見,「最遠の銀河」発見

英仏伊豪の研究チームは,太陽系からの距離が2万5000光年と,これまでに発見された銀河の中で 最も近いところにある小銀河を発見したことを報告した. おおいぬ座の方向にあり,我々の銀河系中心からの距離は4万2000光年. 94年に見つかった「いて座の小銀河」の8万光年よりもそばにある. どちらも我々の銀河系にのみ込まれつつある.星の数は10億ほど.
国立天文台などのチームがハワイの「すばる望遠鏡」により,これまでで最も遠い, 約128億3千万光年離れた銀河を見つけた. 同望遠鏡自身が今年3月に更新した最遠記録を,さらに約300万光年だけ上回った. 外国チームの論文と比べると,「遠い銀河」上位10位のうち,今年, すばる望遠鏡による発見が公表されたものが9個を占めるという.

11/5 朝日新聞

11/5 すばる望遠鏡ニュース

2003/11/02 肉眼で見えるほどの太陽黒点,フレア大爆発,日本でもオーロラ観測

最近,太陽表面に,肉眼でも観測できるほどの巨大な黒点群が現れている. 黒点群全体の大きさは,太陽の直径の10分の1ほど(地球の直径の 10個分に相当し,黒点群全体では地球が100個ほど入る.木星よりも大きい).  太陽黒点は太陽活動が活発になるときに多く現れる.太陽活動は 2000年から2001年に活動期を迎え,現在は極小期に向かっているが,これだけ大きな黒点群が 現れるのは非常に珍しい.
 日本時間28日20時10分頃,かなり大規模なフレア爆発が発生した. 強力なX線や電波・莫大な量の高エネルギーの粒子が放出されるので, 地球に到達すると電波通信を混乱させたり,電子機器 を誤作動させるなどの磁気嵐の原因となる.
 大規模な磁気嵐は,オーロラ活動も活発化させる. 日本でも『低緯度オーロラ』が見られたという報告が北海道陸別町(銀河の森天文台)や 北海道名寄市(木原天文台)で報告された.(23日夕方の小規模なフレアに伴うものが 29日ごろ出現したと考えられている).また,  低緯度オーロラは極地域で見られるカーテン状のものとは異なり,酸素の発 する暗赤色の光が,北の空であまり動きを見せずに幕のように広がっているこ とが多いようだ. 29日以降数日間,茨城県里美村,山梨県長坂町,長野県原村など, ほぼ北緯36度以北の地域で観測された,との報道もある.

spaceweather.com
(天文台ニュース 10/27/ 10/29/ 10/31)
2003/10/28 SDSSが宇宙地図 (A Map of The Universe)発表

Sloan Digital Sky Surveyプロジェクトは, 20億光年先までの銀河20万個の位置を詳細に測定した結果を発表した 結果の1つは,長さ13.7億光年に及ぶ巨大な銀河団の壁構造の発見で, Sloan Great Wall (Sloan万里の長城,Sloanはスポンサーの名前)と名付けている (Preprint astro-ph/0310571) . 今年の2月に発表された,Wilkinson Microwave Anisotropy Probe (WMAP)衛星による 宇宙背景輻射のデータと合わせると,Hubble定数は,70 +- 4,宇宙全体の物質によるエネルギーの割合は 30 +- 4 %,暗黒物質候補としてのニュートリノの質量の上限は0.6 eV,宇宙年齢は, 141 +- 10億年ということになるという. (Preprint astro-ph/0310723).

10/27 SDSS
2003/10/23 天王星・海王星に新しい衛星

今年の1/16にも報じられたが,またまた衛星の発見.ハッブル望遠鏡による観測で, 1986年に宇宙探査機ボイジャー2号による観測を大きく上回っている. 現在太陽系ではっきり確認されている大惑星の衛星 の数は次のようになる.

  水星    なし
  金星    なし
  地球     1個
  火星     2個
  木星    61個 ---- 2003/1/16の時点では 40個
  土星    31個 ---- 2003/1/16の時点では 30個
  天王星   27個 ---- 2003/1/16の時点では 21個
  海王星   13個 ---- 2003/1/16の時点では 11個
  冥王星    1個
天文台ニュース
9/25 Hubble Siteニュースリリース
9/30 ScienceDaily
2003/10/17 太陽系外の惑星,日本で初めて発見

太陽系外の惑星はこれまでに約120個が発見されているが,日本でもようやく発見,の発表があった. きりん座の方向にある恒星(重さは太陽の1.6倍)の周りを198日で1周する木星型巨大ガス惑星で,地球からの距離は約330光年. 国立天文台岡山天体物理観測所の望遠鏡で恒星の光のふらつく様子から,重さは木星の6.3倍と計算している. これまでに知られている太陽系外の惑星は,すべてガスでできた木星型. 生命の可能性がある地球型の惑星は,まだ発見されていない.

10/17 朝日新聞
2003/10/14 トポロジーが12面体の有限宇宙モデル

今年2月に発表されたウィルキンソン・マイクロ波異方性探査機(WMAP)からの最初の年のデータは、 これまでの宇宙論の「標準モデル」を良い精度で確認したが,60度より広い角度スケールでは マイクロ波の温度相関が消失するという予想外の結果もあった. J-P. Luminetらは,ポアンカレ12面体より成る有限宇宙の単純な幾何学モデルを考えることにより, すべてを微調整を必要とすることなく自然に説明できることを提案した. 大角度での温度相関消失は,宇宙自体が最も広い波を保持するほど十分大きくないためであると説明でき, 予測として, 宇宙の密度がΩ_0≒1.013 >1であることと, 天球上の対をなす円(マッチング・サークル)における温度相関の存在を挙げている.

J-P. Luminet et al, Nature 425, 593- 595(2003)

10/8 Physics Web

2003/10/10 磁気モノポールを発見か

Diracが1931年にその存在を仮定した理論を発表して以来,磁気単極子を実験的に探し出す試みは ことごとく失敗していたが,日本・中国・スイスのグループ(つくば・産業技術総合研究所 の十倉好紀氏ほか)は 最近,磁気単極子存在の間接的な証拠をつかんだ,と 論文発表した.従来想定されていた10^{16} GeV付近の高エネルギー領域ではなく, 磁性体の異常ホール効果を運動量空間で表現することにより,0.1-1 eVのエネルギーレベルで. 磁気単極子の存在を仮定しないと説明できない実験結果であるという.

科学技術振興機構のページ
10/2 PhysicsWeb
Z Fang et al. 2003 Science 302 92
2003/10/02 地球温暖化の影響 南極で氷床・北極で氷山が流出

北極圏最大の氷床が二つに割れる
カナダにある北極圏最大の氷床が二つに割れ,一部がバラバラになって海に流れ出していることが, カナダ・ラバル大と米アラスカ大のグループの観測で明らかになった. 北極圏で目立っている温暖化傾向が原因だという. 研究グループのマーチン・ジェフェリーズ・アラスカ大教授は 「氷床の崩壊によって,近くの湖に海水が流入,貴重な生態系が破壊されてしまった」と指摘している. この氷床は,カナダ北部のエルズミア島にあるワードハント氷床.全体の面積が443平方キロで,北極圏で最大とされている. 人工衛星画像と現地調査を基にした研究グループの解析では,この氷床には2000年ごろから大きな亀裂が生じた. 02年に氷床自体が二つに割れた.流出した氷の面積は約25平方キロと推定される. 氷床の陸地側には,淡水や汽水を含む,珍しい極域の湖が形成され,他では報告例がほとんどない プランクトンなどが確認されていた.貴重な生態系はほとんど消失したという. (9/28 毎日新聞 原文のまま)

南極の巨大氷山が分離・流出
米航空宇宙局(NASA)は1日,巨大な氷山が南極のロス棚氷から分離,ロス海に流れ出す様子をとらえた衛星写真を発表した. NASAによると,氷山は幅32キロ,長さ200キロ.単純計算すると,大分県の面積並みの広さ. 昨年5月に棚氷から分離した後も沿岸部にとどまり,周辺の氷をせき止めた. このため春以降も海面が氷で覆われたままになり,植物プランクトンの活動が例年の10分の1に落ち込んだ. 地球温暖化のせいか,南極では棚氷の崩壊が相次いでいる.分析に当たった米スタンフォード大のチームは, 周辺の生態系に悪影響を及ぼす恐れを懸念している. (10/2 朝日新聞 原文のまま)

北極
国際北極圏研究センター(アラスカ大)
地球フロンティア研究室システム
国立極地研 北極圏環境研究センター
通信総合研 北極域国際共同研究グループ

南極
NASA写真
10/3 ScienceDaily
AMSEトピックス
南極ってどんなとこ
国際南極センター

2003/9/26 太陽近傍の重力による電波振動数変化を用いた一般相対性理論の検証

イタリアのBertottiらのグループは, カッシーニCassini 探査機を用いた一般相対性理論の検証結果を報告した.地球とカッシーニ探査機の間に太陽が位置するときに, 電波の振動数が変化する現象を測定した.太陽近傍での時空の歪みは,パラメータγ (一般相対性理論では1,ニュートン重力では0)を用いて表される.今回得られた,γ=1+(2.1±2.3) ×10^(−5) という値は,今までの制限値より50倍も精度が良い.この精度は初期宇宙のいくつかのモデルが却下できる レベルに近づいている.

PhysicsWeb
Nature 425, 374- 376 (2003)
2003/9/25 銀河が銀河を飲み込む 我々の銀河でも アンドロメダでも

(我々の天の川銀河) 我々の天の川銀河が,「いて座」の方向にある近くの(8万光年先の)小銀河を 飲み込みつつあることを,米バージニア大とマサチューセッツ大の共同チームが,小銀河周辺の赤外線観測を元に24日発表した.

(アンドロメダ銀河) 220万光年先のM31アンドロメダ銀河が,2つの伴銀河 (M32とNGC205) を吸収しつつある「共食い銀河」であると,フランスの 研究グループが光学観測で報告した.
今から30億年ほど後には,我々の天の川銀河とアンドロメダ銀河は衝突融合してひとつの銀河となるらしい.

銀河関係もう一件. 若い銀河団の中に,ほぼ同時期に形成された重くて明るい楕円銀河 (massive, luminous elliptical galaxies)の集団をサブミリ波観測によって 発見したと,Lawrence Livermore国立研究所の研究者らが報告した.

(我々の天の川銀河)
朝日新聞 9/25 Astrophys. J. 12/20

(アンドロメダ銀河)
アストロアーツ 9/19
アストロアーツ 7/12 Nature 7/5

(若い楕円銀河)
ScienceDaily 9/18
Breugel et al., Nature 9/18

2003/9/20 ガリレオ衛星,木星へ突入

米航空宇宙局(NASA)は,搭載した燃料が残り少なくなった木星探査機ガリレオを, 21日,木星の大気層に突入させ,使命を終わらせた. ガリレオは1989年にスペースシャトル・アトランティスから放出され,95年12月に木星の軌道に到達, これまでに木星34周をし,データを送信し続けてきていた.46億キロ飛行したことになる. 木星の大気にアンモニアが含まれること,エウロパなど3つの衛星に海水が存在するらしいこと, 衛星イオで激しい火山活動が続いていることなどを観測した. 突入させる理由の一つには, 生命が存在する可能性もある木星の衛星のエウロパにガリレオが衝突して汚染することを早期に防ぐため, ということもあったらしい.

JPL Galileo
NASA Galileo

sciencedaily 9/18
sciencedaily 9/20
朝日新聞 9/22

2003/9/10 巨大ブラックホールの「音」を観測

X線観測衛星「Chandra」(NASA/PSU/Harvard)は, ペルセウス座の銀河団(2億5千万光年)中心付近のブラックホールを,連続53時間観測した結果, ブラックホールから発生する「音波」を世界で初めて捕らえたと発表した. X線の揺らぎがブラックホールから5万光年 の領域に渡り,周囲のガスを加熱していると考えられる. ちなみに,音といっても周波数が低く,ピアノの鍵盤の中央のCより,57オクターブ下のB flatの音だそうだ (人間の耳では聞き取れない).

Chandra衛星のサイト発表
NASA発表
朝日新聞
2003/9/8 9月半ばにもM7クラスの地震?

 今日,某メーリングリストで,「FM電波観測で捉えた地震関連異常に関する 検討会」なる緊急研究討論会が開かれる(9月12日)との情報が回ってきた.メールには, 「研究討論会の性質上,本メールは転載不可」と書かれていたが,数百人規模 で回っているメールだし, 明日発売の「週刊朝日」も報道するらしい から,ここでその内容を公開しても罰は当たらないだろう.

 FM電波の異常受信が地震に先行するという可能性が指摘されているらしい. この可能性に気づき,観測を続けているのは, 八ヶ岳南麓天文台(民間) の串田嘉男氏で,彼はその研究によって,9月半ばにもM7クラスの地震が 関東南部で起きる可能性ありと警告している.データやいきさつは,彼の研究を 支援するグループ ( EPIO応援班) にある.奥尻島の地震直前に流星観測でFM電波の異常に気づき,神戸大震災の 直前にも同様の経験をしたことから,本格的に地震予知を目的として,データを 集めているそうである.

 FM電波異常を利用する地震予知は,まだ仮説に過ぎないものだ.(そもそも地震予知は まだまだ不定要素が大きく,予知と呼ぶにはほど遠いものらしい.) 横浜国立大の石川助教授からの私信によれば,

『いつ起きても地震学者は驚かない状況が過去20年以上 続いているのは事実ですが,9月半ばにマグニチュード7クラスの地震が起きると 予知できるほど地震学は進んでいません(火山噴火予知は過去10年間で飛躍的に 進歩しましたが,地震予知は確実な前兆現象を見つけるのが難しくまだまだです). ただし,根拠のない予想がたまたまあたる可能性は当然あります. 最近数年は地震と地球内部の水の関連性が新たに注目されてきたので,これからの10 年で地震予知研究は飛躍的に進歩すると個人的には思います.』

 今回の予知のメカニズムについて, 地震電磁波研究同好会(任意団体)や, 地震雲以外での地震予知 には,結構それらしい説明があるが,科学的と呼ぶには,まだ詰めが甘いとの非難も 多分にできそうである. 串田氏に解雇された人の, 問題提起・反論ページ もあり,今回の予知をそのまま鵜呑みにするのもどうかと思うが,「寺田寅彦は忘れた頃に やってくる」(松本哉著,集英社新書)とも言うから,備えだけは必要であろう.

(03.9.16 追記)
9月12日に開かれた検討会についての 毎日新聞報道.電磁波異常はFM波だけで,他の波長帯では観測されていないらしい.
この件についての良いフォローアップページ「SOS」 および「反応」 を発見. 行徳高校自然科学部 [地震前兆電波観測]ページも役立つかも.

(03.9.17 追記)
電磁波ノイズを使って地震予知を試みる くるぞーくんは, 9月17日に「9月19日頃に首都圏東西方向に M4程度の地震が発生すると思われます」と告知している. この予測ではM7の地震前兆はない,とのこと.

(03.9.21 追記)
9月20日 12:55 千葉県東方沖 M5.5 深さ80km,関東圏では最大震度4の地震があった. くるぞーくんに軍配. 串田氏は予兆の解析結果を「小規模地震が複数ある」と変更したようだ.

(03.9.26 追記)
今朝北海道でM8級の地震が2度発生した.こちらは残念ながら くるぞーくんでも 行徳高校でも「異常検知注視」状態だけだったようである.

リンク集 (地震電磁波研究同好会)

日本気象協会地震情報
日本付近の地震活動(東大)
K-net(防災研)
世界の地震(USGS)

日本地震学会
地震予知連絡会
地震予知研究センター

岩波「科学」9月号は,「地震防災と危機管理」特集(「電磁波による地震予知」の扱いは低い)

電気学会誌 2003年4月/9月号にも,「電磁波による地震予知研究」の記事あり.

2003/8/22 火星表面に少量の炭酸塩発見.「海はなかった」??

Arizona 州立大のJoshua Bandfieldらは,NASAの火星探査機(マーズ・グローバル・サーベイヤー)の 放射熱分光計による火星表面のデータを分析した結果,火星の表面に 少量の(2 to 5 weight %) 炭素(carbonates),そのほとんどはmagnesite (MgCO3),を初めて発見した,と論文発表した. かつて海があったとすると、火星大気の主成分の二酸化炭素が海水に溶け込む. 海が干上がった後には、海水中の炭酸イオンと金属(カルシウムやマグネシウム)イオンが結びついてできた炭酸塩が 豊富に残るはずなので,炭酸塩がごく少量しか見つからなかったことは,火星に「海はなかった」ことを示唆する. しかし,火星の地表には、海や川の跡とも思える地形が残っており,疑問が残る.

朝日新聞
PhysicsWeb
J Bandfield et al. 2003 Science 301 1084
2003/8/13 素粒子崩壊で新現象 標準理論に合わず、未知の粒子存在か−−高エネ研など観測

高エネルギー加速器研究機構(KEK)などの国際共同研究チームBelleグループは,一周3キロの大型加速器(Bファクトリー)で生成される「B中間子」と「反B中間子」を観測しながら標準理論の検証を進めていたが,これまでの「標準理論」では説明できない新しい現象を観測した,と国際会議Lepton Photon 2003で発表した.B中間子と反B中間子を1億5000万個作り出したところ、そのペアのほとんどの壊れ方には標準理論が予測する通りの差が表れた。しかし、両粒子が壊れて「φ(ファイ)中間子」と「K中間子」になるパターン(68例)では、壊れ方の差が、標準理論の予測とは大きく異なった。実験結果は99・99%の精度で確かだという。  研究グループは、今回のφ中間子とK中間子への崩壊では崩壊途中に一時的に、数千億電子ボルトを超える高エネルギーを持つ未知の粒子「超対称性粒子」が存在したため標準理論からずれた可能性があると指摘している。

毎日新聞記事
毎日新聞解説
KEKのweb発表
2003/7/15 火星大接近関係

最接近する2003年8月27日には、地球〜火星間の 距離が5576万キロメートルとなり、火星の視直径が25.1秒(満月のおよそ70分 の1の大きさ)にもなる.数字的には、およそ6万年ぶりの超大接近.

http://kaseiweek.net/
2003/5/30 すばる望遠鏡 遠方の超新星を多数発見

 東京大学、国立天文台を中心とする研究グループは、すばる望遠鏡の主焦点 カメラを使い、遠方銀河において18個の超新星を発見した。カメラの1視野 (30分角の視野) に12個もの超新星が写っており、これほど数多くの超新星を一度に発見したの は、世界で初めて。 これらの超新星は40〜70億光年の距離にあると推定され、最も遠いものは、 70億年前の爆発。
 今回の超新星候補は、8.2メートルすば る望遠鏡のほか、ケック10メートル望遠鏡、GEMINI 8.1メートル望遠鏡、VLT 8.0メートル望遠鏡および2.5メートルハッブル宇宙望遠鏡を用いて追跡観測さ れた。「現在の宇宙が加速膨張しているのか」の問題を解決する距離指標として 今後使えることが期待されている.

東京大学大学院理学系研究科の記者発表
天文台ニュース
2003/5/23 巨大ブラックホール連星発見

VLBIによる 1年半の電波観測で,赤方偏移z=0.0215(13)の距離 (約80Mpc,2500万光年先)にある天体3C 66B の軌道が周期1.05+-0.03年で楕円を 描いていることがわかった. 2.3GHzと8.4GHzの2つのバンドでは,どちらも同じ周期の軌道を見いだしたが, 見かけの長軸は 2.3GHzの方が5倍長く,二つの長軸の傾きは24度あった. 8.4GHzの電波源の方が,運動の中心部に近いところから放出 されていると考えられる.したがって,ジェットを放出している 3C 66Bは単なる歳差以上の 影響を受けている.
周期より,中心の天体の質量密度は,
rho = 2x10^{15} M_solar /pc^3
8.4GHzの長軸が中心天体の半径の上限を表すとすると,
r_max = 5.4 (1+q) x 10^{16} cm
M_max=4.4 (1+q)^2 x 10^{10} M_solar
連星それぞれの質量がわからないので,重力波の放出による合体は不明で あるが,合体したならば,重力波振幅は h=10^{-11}であると期待される.

Physics Web
天文台ニュース

記者会見資料 at 岐阜大 須藤氏のページ

H. Sudou, S. Iguchi, Y. Murata, Y. Taniguchi Science 300 (2003) 1263

2003/3/3 高次元の証拠はまだでした

コロラド大学のグループの実験により,0.1 mmスケールでの2物体の重力が測定された. (これまでの実験の限界は,0.2mmだった.) Newtonの力の逆2乗則からの有意なずれは,まだ発見されず,とのこと.

Physics Web
J C Long et al. 2003 Nature 421 922
2003/2/20 初の「内小惑星」発見

リンカーン研究所チームが、遠日点距離が1天文単位以内にある小惑星を初めて発見した. 近日点距離は 0.5369 天文単位,遠日点距離は 0.9779 天文単位.  このような天体は,金星や水星と同じように,地球から見るとなかなか太陽 から離れないので,これまで発見されにくかったと考えられる.発見されたとき の明るさは16等. この天体の地球との最接距離は 0.19 天文単位、金星との接近 距離は 0.05 天文単位.軌道が黄道面から25度ほど傾いているため、 衝突する可能性はない.

国立天文台ニュース
IAUC 8072 (Feb. 14 2003)
MPEC 2003-C63 (Feb. 13 2003)
太陽系小天体の世界 小惑星データベース (1999)
2003/2/13 近距離の恒星の発見

距離2.3パーセク(7.5光年)の恒星をNASAのグループが発見. ちなみに最も近い恒星は,ケンタウルス座のプロキシマ星で、1.30 パーセク(4.24光年), ついでケンタウルス座アルファ(α)星の A B の2星で、1.34 パーセク(4.37光年), へびつかい座バーナード星の 1.83 パーセク(5.97光年),そしてしし座ウォルフ359番星の 2.39 パーセク(7.79光年).

国立天文台ニュース
B. J. Teegarden, et al. astro-ph/0302206
2003/2/12 MAPのデータが公開される

WMAP衛星(Wilkinson Microwave Anisotropy Probe)によって,宇宙背景輻射の詳細が観測・解明された. COBE衛星の観測データをより詳細に調べたものだ. 今回のデータにより,ビッグバン宇宙論の基礎方程式にあるパラメータが決定された. ハッブルパラメータは71(これにより宇宙の年齢は137億年), 宇宙全体の曲率はゼロであり(収縮することはなく), 存在する物質は普通の物質4パーセント, 暗黒物質(いわゆるダークマター)23パーセント, 宇宙定数(あるいはダークエネルギー)が73パーセント.

WMAP / 論文ダウンロード
NASA / NASA
天文台ニュース
2003/2/5 池袋のサンシャインプラネタリウム,6月に閉館と発表

開館以来25年,渋谷の五島プラネタリウムの閉館後,東日本で最大の大きさを誇り,日本で 第2位の集客力をもつプラネタリウムであるが,6月に閉館する,と発表した. 存続を願う会では署名運動をはじめている.

天文台ニュース
日本プラネタリウム協会
「サンシャインプラネタリウム存続を願う会」署名
2003/2/1 スペースシャトル,コロンビア帰還時に空中分解

宇宙飛行士7人死亡,原因究明中.

朝日新聞
2003/1/16 木星と海王星に新衛星発見

昨年,ハワイ大学のシェパードによって、木星に新しい衛星が発 見されたことが、12月18日のIAUC(国際天文学連合回報)で報じらた.  次いで、アメリカ ハーバード・スミソニアン宇宙物理学センターのホール マンらのグループによって、海王星に新たに3つの衛星が発見されたことが、今 年の1月13日のIAUCで報じられた。 これらの発見によって、現在太陽系ではっきり確認されている大惑星の衛星 の数は次のようになる.

  水星    なし
  金星    なし
  地球     1個
  火星     2個
  木星    40個
  土星    30個
  天王星   21個
  海王星   11個
  冥王星    1個
天文台ニュース
IAUC 8035(2002 December 18)
IAUC 8047(2003 January 13)
Scott S. Sheppard
Harvard-Smithsonian Center for Astrophysics
2003/1/8 Gravity and light move at the same speed

Scientists have succeeded in measuring the speed of gravity for the first time. Sergei Kopeiken of the University of Missouri-Columbia and Ed Fomalont of the National Radio Astronomy Observatory in the US used a rare cosmic alignment to check that gravity and light travel at the same speed -- as predicted by Einstein. The astronomers presented their findings today at the American Astronomical Society meeting in Seattle.

physicsweb

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