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2003年11月分 最新版はここ, 索引はここ

週に一度くらいのペースで,私が見聞した情報をここに書いていきます.
2003/11/29
2003/11/22
2003/11/15
2003/11/08
2003/11/02
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2003/8/22
 
 



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2003/11/29
  • 今週のサイエンス情報

    • 【物性物理】FermiガスからBose-Einstein凝縮体生成
      オーストリアのグループは,フェルミオンであるリチウム6分子10万個以上を20秒以上に渡って 凝縮状態に閉じこめることができたと発表(S Jochim et al. 2003 Sciencexpress 1093280). アメリカのグループもカリウム40を用いて同様な実験に成功したと発表した (M Greiner et al. 2003 Nature to be published; arxiv.org/abs/cond-mat/0311172). 極低温でのFermi気体における超流体現象の実現に向けて,前進したといえる. 分子中の原子は強く束縛されているが,Copperペア状態ではそれほど強くは束縛されていない. 後者の状態の制御が一層可能になれば,超伝導のメカニズムの理解が進むと期待されている. (11/19 PhysicsWeb, 11/25 PhysicsNewsUpdate
    • 【物性物理】流体研究からナノワイヤー誕生
      水滴や泡は,ノズルから放出されてしばらくすると,液体中でも気体中でも, 同じように壊れるものと考えられていたが,例外が報告された. 粘性のあるシリコンのような液体中では,空中に比べてはるかに長い時間をかけて液滴が形成される.言い換えると, ノズルから出された初期状態を「記憶」しているという.微細技術,ナノ構造,薬学などへの応用が期待されている. (P Doshi et al. 2003 Science 302 1188) (11/17 PhysicsWeb
    • 【光物性】光の干渉で黒点を生成
      最近,dark lightとしてその存在が予言(J Leach and M Padgett 2003 New J. Phys. 5 154) されていた,光の干渉による光度の相殺現象を実験的に確認した,とイギリスの研究者らが 報告した. (11/21 PhysicsWeb
    • 【計算科学】GRAPE-6 システムが2003年ゴードン・ベル賞を受賞
      東京大学と国立天文台の重力 多体問題専用計算機 GRAPE-6 開発グループが,今年のGordon Bell賞特別賞を受賞した. 米国電気電子学会コンピューター協会(IEEE Computer Society)が,毎年 最も優れた性能を出している計算機開発を行っている人々を表彰しているもので, GRAPEの開発グループは6度目の受賞.以下のコラムで補足解説. (11/27 アストロアーツ, GRAPE Project, 国立天文台 GRAPEシステム , 国際会議 SC2003
    • 【顕彰】デカルト賞は,2つのグループに.
      科学・技術に顕著な貢献をしたヨーロッパ内の国際共同研究を表彰する デカルト(Descartes)賞,4年目の今年は,高分子光放出ディスプレイの開発( 従来のガラス・シリコン製に替わるプラスチック製ディスプレイ)と 衛星の位置特定システムの改善の2つのグループが賞金100万ユーロを分割することになった. (11/21 PhysicsWeb
    • 【宇宙開発】米の火星探査機,太陽活動の影響で故障
      火星上空から鮮明な画像などを送ってきている米国の探査機「マーズオデッセイ」の放射線計測装置が, 10月下旬に起きた太陽の爆発的活動以降,故障していることを米航空宇宙局(NASA)が明らかにした. 復旧信号を送っているが功を奏していない. 同装置は,有人火星探査に備え,放射線被曝リスクを調べるのが目的. (11/28 朝日新聞
    • 【宇宙開発】シャトル安全対策に300億円 NASAが見積もり
      米航空宇宙局(NASA)は24日,スペースシャトル・コロンビアの事故を教訓にした 安全対策をシャトルに施した場合,最低でも2億8000万ドル(約305億円) のコストがかかるとの見積もりを発表した. このうち6000万ドルは2003年度予算に計上ずみで, 残りを2004年度予算に計上する.額はさらに大きくなる可能性もあるという. NASAは来年秋の打ち上げ再開を目指しているが,2005年にずれ込む恐れもある. (11/25 朝日新聞

  • 今週のサイエンティスト情報

    • 国立大学法人化後の運営交付金「効率化係数」構想に国大協が撤回要求
      財務省は, 来年4月に法人化される国立大学の運営費交付金に効率化係数(中期計画期間中の予算削減割合)を 5%以上かけるべきだと主張している. 国立大学協会と 大学共同利用機関所長懇談会は独立に, これに反対する声明を決議した. 現在の情勢では運営費交付金を全く減らさないというのは難しいため, 増やすためのルール作りができるかどうかが今後の焦点となる. (11/21 科学新聞
    • 総務省,義務教育負担金で3100億円一般財源化要求へ
      国と地方を通じた税財政の「三位一体改革」で,総務省は補助金削減の最大の焦点になっている 約2兆8000億円の義務教育費国庫負担金のうち,文部科学省の裁量権が強い約3100億円を来年度に 一般財源化して地方に全額税源移譲するよう求める方針を決めた. 教職員配置に関する地方の自主性を大幅に高める狙いがあるが,裁量権を失う文科省の反発は必至. (11/28 朝日新聞)

  • 今週の「ゴードン・ベル賞」THE GORDON BELL PRIZES

     毎年,大規模・高速な数値計算の能力を発揮できたコンピュータを開発した人に贈られる1988年に創設された賞で, Microsoft社の Gordon Bellから5000ドルの賞金が 与えられる.運営は米国電気電子学会コンピューター協会(IEEE Computer Society)が行っている. Gordon Bell氏は,DEC PDP-11 と VAX-11の設計に携わった計算機設計者で, 高速並列計算(high-performance and parallel computing)のパイオニアである.
     ゴードン・ベル賞は,3つの賞がある.

    • 実効性能部門(Peak Performance):実アプリケーションを用い,高速な数値計算を行える環境を構築したグループに与えられる.
    • 価格性能比賞(Price/Performance):実アプリケーションを用い,高速かつ安価に数値計算環境を構築したグループに与えられる. 「計算速度÷コスト」を争う.
    • 特別賞(Special):高速な数値計算を行い,なおかつ新技術やアルゴリズム・データ処理方法等を開発したグループに与えられる.
    毎年11月に開かれる「大規模数値計算国際会議(Supercomputing Conference)」で受賞者が発表されるが,該当者なしの場合も ある.今年は国際会議 SC2003で発表が行われた.
     最近の受賞者は次のようである. (1999年までの受賞グループ

    year実行性能部門最高性能賞
    Peak Performance
    Price/PerformanceSpecial
    2003
    finalist
    「地球シミュレータ」, 地震波の解析:5 Teraflop/s, 2.5 Terabyte Simulation, 1,944 processors. 米国 Carnegie Mellon大 ・New York大他,1994年ロスアンジェルス地震の解析:100 million grid points.
    lifetime賞: 東京大学/ 国立天文台「GRAPE-6」, 太陽系外縁部のカイパーベルトの太陽系形成初期における進化の 多体シミュレーション:33.44 Tflops
    2002 「地球シミュレータ」 , 全球大気大循環シミュレーション:26.58 Tflops 「地球シミュレータ」 , 乱流直接数値シミュレーション:16.4 Tflops
    言語賞: 「地球シミュレータ」 , 核融合3次元流体シミュレーション:14.9 Tflops
    Salinas: A Scalable Software for High Performance Structural and Solid Mechanics Simulation: 1.16 Tflops
    NAMD: Biomolecular Simulation on Thousands of Processors
    2001 東京大学 「GRAPE-6」, 銀河中心核におけ るブラックホールの運動の多体シミュレーション:11.55 Tflops 韓国,impact locating on aircraft structure by low-cost cluster : 24.6 cents/Mflops Cactus and Globus, supporting efficient execution in the heterogeneous distributed computing environments.
    2000 東京大学 「GRAPE-6」銀河中心核におけ るブラックホールの運動の多体シミュレーション:1.349 Tflops
    理化学研究所「MDM」塩の分子動力学シミュレーション :1.34 Tflops
    Ultra-Large_Scale Neural-Network Training on a PIII Cluster:92 cents/MFlops/s High-Performance Reactive Fluid Flow Simulations Using Adaptive Mesh Refinement on Thousands of Processors

     東京大学を中心とするGRAPEの 開発グループは6度目の受賞.日本のグループは,最近は地球シミュレータが強いが, 1995年には航空宇宙技術研究所・山形大学・広島大学のグループも受賞している. (11/27 アストロアーツ, 国立天文台 GRAPEシステム , )
     1 Tflopsは,1秒に 1兆回計算をするという計算速度の単位であり,33 Tflops は,最新のパソコン 数万台分に相当する性能となる.Gordon Bell氏は, 自身のホームページで, Tflopsマシンは95年頃,Petaflopsマシンは2010年頃実現できるだろうと予測している.
     なお,コンピュータの速さを競う賞としては, TOP500もあり,こちらでは現在 地球シミュレータがトップである.TOP500は, LINPACKというベンチマークソフトを用いて比較をしている. ゴードン・ベル賞は実アプリケーションと測定方法に違いはあり,一概には比較できないが, GRAPE-6は地球シミュレータよりより 25% 速い演算速度を持つそうだ. http://www.supercomputingonline.com/

  • 来月は,「ライト兄弟初飛行100年」

     1903年12月17日,Orville Wright(1871-1948)とWilbur Wright(1868-1912)が人類初の動力飛行を成し遂げてから100年が経つ. 初飛行は,12秒間で約37メートル,コイン投げで勝ったOrvilleが,Flyer号を操縦した. この日の4回目の飛行ではWilburが操縦し,飛行時間59秒,距離260メートルを記録したという.
     しかし,兄弟はライバル達に情報が漏れるのを怖れ,秘密主義で発明と改良を続けたために,彼らの名声は ずいぶんと後になってからのことらしい. 当時は飛行機開発競争が過熱していたが,ライト兄弟は早くから 操縦安定性の改良に努力していた. 1905年に39.5分,39Kmの飛行に成功してもなお,新聞報道さえ許さず,彼らが名声を得るようになったのは, 米陸軍やフランスと商談がまとまる見通しがついた1908年8月に公開飛行を行ってからのことだという.
     初飛行から,たった100年しか経っていないのか,というのが正直な印象だ. ちなみに1911年には,すでに欧州のいくつかの企業で ライト兄弟のものより優れた飛行機を製造していたという. (日経サイエンス2004年1月号の記事 (Scientific American, 2003 Dec)を参考)


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2003/11/22
  • 今週のサイエンス情報

    • ESA,初の予算削減
      ヨーロッパ宇宙機関 The European Space Agency (ESA) は,初めて予算の欠如を理由に予定されていた ミッションの取り消しを発表した. 太陽系外惑星探査機 Eddington は中止, 水星探査機 BepiColombo は水星着陸を打ち切り.唯一,削減なしで通った将来プロジェクトは,宇宙空間重力波レーザー干渉計 LISA (Laser Interferometer Space Antenna)計画.2008年に事前調査のpathfinderミッションの打ち上げが予定されている. (11/11 PhysicsWeb).
    • 【物性物理】有機薄膜メモリ発表
      Organic electronics: The WORM's turn 有機薄膜を用いた電子製品として,メモリを開発した,と プリンストン大とHewlett-Packard社の研究者が報告した. WORM (write-once-read-many-times)メモリと名付けられ,すでに 1 Mbyte/sec 以上のスピードをもつという. 既存のメモリ製品より廉価で,将来はプラスチックやガラス・金属に貼り付けることで用途も広がると 期待している.( S Moller et al. 2003 Nature 426 166 / 11/12 PhysicsWeb
    • 【物性物理】カーボンナノチューブが軍事利用へ
      分子レベルの大きさであるカーボンナノチューブが,特定のガスに反応して 電気抵抗をもたらすことが発見され, 神経ガスセンサーなどへの転用例が提案された. (J Novak et al. 2003 Appl. Phys. Lett. 83 4026) 11/13 PhysicsWeb

  • 今週のサイエンティスト情報

    • 仁科賞,強相関電子系の超伝導体発見・カムランド実験・ペンタクォークの発見の3名に
      11月20日, 仁科記念財団が, 2003年度の第49回仁科記念賞 の受賞者3名を発表した.仁科記念賞は,故仁科芳雄博士を記念して設立された賞で, 原子物理学とその応用の研究に過去数年間に優秀な成果を収めた日本人物理学者に 与えられている.以下,上記のホームページより引用.
      • 北岡良雄(大阪大学)「核磁気共鳴法による新しい超伝導状態の解明」
        核磁気共鳴と呼ばれる磁性を調べる手法を駆使して,新しく発見された種々の 超伝導体において,従来の常識的な超伝導状態とは異なる性質をもつ超伝導体 状態が存在することを明らかにした.これらのエキゾチックな超伝導状態は, 金属固体中の多くの電子が強い反発力の影響下で運動する系 - 強相関電子系 - に特徴的にあらわれることを,多元極限環境(極低温,高圧,強磁場)下での NMR法によって見事に実証・解明した.
      • 鈴木厚人(東北大学)「原子炉反電子ニュートリノの消滅の観測」
        実験に用いられたカムランドは,かつてカミオカンデ測定器の設置されていた 神岡鉱山の地下に,約1000トンの液体シンチレーターを透明な気球に入れて 建設した極めてユニークで超高感度な放射線検出器である.日本海沿岸, 中京地域で多数稼働中の発電用原子炉からは百数十kmに位置し,これら原子炉の 発する反電子ニュートリノ振動の観測を行うには最適な場所であるといえる. 初めて人工の電子型ニュートリノでその振動の兆候である欠損現象を検出し, 長い間の懸案であった太陽ニュートリノの問題に対して,電子型ニュートリノ振動の 性質を明確にした.受賞者は,卓越したアイデアでこの実験を企画し,優れた指導力に より国際チームをまとめて技術的に困難な実験を遂行し,ニュートリノ物理学に新しい局面をひらいた.
      • 中野貴志(大阪大学)「レーザー電子ガンマ線による新粒子の発見」
        本研究は大型放射光施設 SPring−8 のレレザー電子光施設(LEPS)で得られる ガンマ線を用いて,クォーク5個からなると思われる新粒子を発見したものである. これまで素粒子のうちバリオン(陽子や中性子など)は3個のクォーク,中間子は 2個のクォークから出来ていることが知られていた.理論的には5個のクォークや 4個のクォークで出来た粒子があってもよいのだが,30年余にもわたる探査にも 関わらず観測されなかった.受賞者による発見はクォークが5個よりなる粒子 (ペンタクォーク)の存在を示し,新しい粒子の世界への窓を開いた.
      最近の受賞者リストは私のリンクにあり
    • 文部科学省 大学等におけるフルタイム換算データに関する調査報告
      大学教員はこの10年で長時間働くようになっているものの,研究できる時間はあまり増えていない. 文部科学省は,OECDの科学技術統計に使うため,大学教員の勤務時間とその内訳について, 国公私立大学等の教員2万1500人を対象にアンケート調査を発表した. 10年前に較べて,大学教員の勤務時間は増加,研究時間は減少しているという.
      年間の総職務時間は平均で2,793時間.平成4年と比べると372時間増えている. 研究にはこのうち1,300時間(46.5%)が割かれているが, 平成4年と比べると時間換算では33時間ほど増えているが,割合は52.6%から6ポイントほど下がった. 教育活動は前回の682時間から662時間と減った. 社会貢献や社会サービスに276時間,本務校の運営業務に325時間使っている. 総勤務時間を学問分野別に見ると,人文社会系が2500時間前後であるのに対し, 保健分野(医学,歯学等)3084時間,理学3053時間,農学2903時間,工学2879時間となっている. ( 11/6 大学等におけるフルタイム換算データに関する調査報告/ 11/14 科学新聞

  • 今週の「科学に関する25の刺激的な質問」

     New York Timesの科学欄が25周年を迎え, 「科学に関する25の刺激的な質問(the most provocative questions facing science)」 と題した 特集を組んだ. 11/10 NewYorkTimes
     いかにもアメリカ人が好きそうな「男は必要か.女は必要か」という質問から, 本当にまじめな科学的な質問,どうでもいい質問まで質にばらつきがある. New York Timesでさえも,この程度の問題提起かと少し悲しくなるが, 質問の重要度は考えずに,寝転がってでも眺めるレベルの程度の 特集と考えればまあ面白い(そういえばインターネットの閲覧はまだ寝転がっては無理ですねえ).
    (1) Does Science Matter? 科学は役に立っているのか
    (2) Is War Our Biological Destiny? 戦争は生物学的な運命か
    (3) Will Humans Ever Visit Mars? 人類は火星へ到達できるか
    (4) How Does the Brain Work? 脳の仕組みは解明できるか
    (5) What Is Gravity, Really? 重力とは本当は何か
    (6) Will We Ever Find Atlantis? アトランティス島を見つけることができるか
    (7) How Much of the Body is Replaceable? 人体はどの位置き換え可能か
    (8) What Should We Eat? 我々は何を食べるべきか
    (9) When Will the Next Ice Age Begin? 次の氷河期はいつ始まるか
    (10) What Happened Before the Big Bang? ビックバン以前には何が起きていたのか
    (11) Could We Live Forever? 我々は永遠に生きることができるか
    (12) Are Men Necessary? ... ... Are Women Necessary? 男は必要か.女は必要か
    (13) What Is the Next Plague? 次に流行する伝染病は何か
    (14) Can Robots Become Conscious? ロボットは意識を持つことができるか
    (15) Why Do We Sleep? 何故我々は眠るのか
    (16) Are Animals Smarter Than We Think? 動物達は我々が考えているより賢いか
    (17) Can Science Prove the Existence of God? 科学は神の存在を証明することができるのか
    (18) Is Evolution Truly Random? 進化は本当にランダムなのか
    (19) How Did Life Begin? 生命はどうやって始まったのか
    (20) Can Drugs Make Us Happier? Smarter? 薬は我々を幸福にしたのか,賢くしたのか
    (21) Should We Improve Our Genome? 我々は自らの遺伝子を改変すべきか
    (22) How Much Nature Is Enough? どれ位自然があれば十分か
    (23) What Is the Most Important Problem in Math Today? 現在の数学におけるもっとも重要な問題はなにか
    (24) Where Are Those Aliens? 宇宙人はどこにいるのか
    (25) Do Paranormal Phenomena Exist? 科学で説明できない現象は存在するか

  • 今週の本棚

    • 「日本科学技術大学教授上田次郎のどんと来い,超常現象」 テレビライフ編集室 (編集) ,学習研究社 《amazon.co.jp》 《bk1
    いやあ,上田次郎先生,本当に本を出されていたんですね.本屋で手にして思わず買ってしまいました... 字がでかい割には高いぞ.(TRICK見てない人,ごめんなさい.知らずにこの本を買ってしまうと, 「上田先生はなんて偉いんだ」と感動してしまいます)

  • 11月24日早朝,南極で皆既日食

     11月24日早朝に南極で皆既日食が起こる.日本では見られないが, NHKおよび民間団体「ライブユニバース」によって中継される. 極地方で起きる日食は,それほど珍しいわけではないが,南極から本格的に 日食が中継されるのは初めてのこと,という.白夜の南極では 地平線に近いところで起きる日食となる. 地平線に近いと,その壮観な眺めが視覚的に強調 されることがあるそうだ.

    NHK南極プロジェクト
    ライブユニバース
    11/19 国立天文台・天文ニュース


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2003/11/15
  • 今週のサイエンス情報

    • 【素粒子物理】Belle が新粒子発見 −新しいタイプの中間子か− 「mystery meson」
      高エネルギー加速器研究機構(KEK)で実験中の国際共同研究グループ Belleが,新しいタイプの粒子を発見したと 発表した. X (3872) と名づけられたこの粒子はおよそヘリウム原子1個分の重さを持ち, 生成後およそ1兆分の1のさらに10億分の1秒ほどで他の安定な粒子に崩壊する. この程度に重い粒子の寿命としては異常に長い. これまで考えられている粒子分類方法では説明するのが難しいという. KEKのBファクトリー加速器 (KEKB) で生成されたおよそ1億5000万個のB中間子 反B中間子対の崩壊の中から36例見つかった. すでに最近米国 フェルミ国立研究所で稼働中の 世界最高エネルギーを出すテバトロン加速器でのCDF実験がBelleグループの発見を 確認している. 新粒子は「mystery meson」と呼ばれている.
       通常「中間子」と呼ばれる粒子は1個のクォークと1個の反クォークが「強い力」で結びつけられている. 新粒子はD中間子と呼ばれる粒子2個が分子のように結びついた状態(4個のクオークで構成)と考えられ, 一部の理論家がその存在を予想していたという. Phys. Rev. Letter誌に投稿中(hep-ex/0309032) とのこと. 11/14 朝日新聞 / KEK プレスリリース / physicsweb
    • 【素粒子物理】中間子実験がBell不等式の破れを確認 量子力学追認
      量子力学と特殊相対性理論の不整合性を示す「ベルの不等式Bell's inequality」 の検証実験が高エネルギー領域で初めて報告された (quant-ph/0310192; J. Mod. Optics to be published). B中間子を用いた高エネルギー加速器研究機構(KEK)の実験で, Bell不等式の破れを確認,量子力学の予言が正しいことを追認した. これまでの「ベルの不等式」の検証は,光子やイオンを用いていた. (11/7 PhysicsWeb/ 参考資料)
    • 【惑星科学】火星に湖や川の跡を発見?
      米航空宇宙局NASAは13日,火星探査機マーズ・グローバル・サーベイヤー Mars Global Surveyor が 撮影した写真から,火星表面に水が液体の状態で恒常的に存在し, 川や湖があったことを示す扇形の地形が見つかったと発表した. 扇形は南半球のクレーターの中にあり,長さ13キロ,幅11キロほど.水が流れたような跡 が複雑に入り組んでいる.数十億年前にできた地形とみられる. これまで火星では,氷や一時的な洪水の跡は見つかっている. ただ,気圧が低いため液体の水はすぐ蒸発してしまうという見方が強かった (11/14 朝日新聞 原文のまま). NASA プレスリリース
    • 【理論物理】Physics Worldが量子重力特集
      英国物理学会誌Physics Worldの11月号が,「量子重力」記事を特集している. 記事は, Welcome to quantum gravity (by editor)と, Superstrings (Leonard Susskind), Loop quantum gravity (Carlo Rovelli), Quantum-gravity phenomenology (Giovanni Amelino-Camelia) の3つ.

  • 今週のサイエンティスト情報

    • アメリカ大型研究開発計画,28項目発表
      米エネルギー省は10日,米国が今後20年間で優先するべき28項目の大型研究開発計画を発表した. 最優先課題は,日本,フランス,スペイン,カナダが誘致に名乗りを上げている国際熱核融合実験炉(ITER)計画. 第2位となったのは,日本に世界一の座を奪われたスーパーコンピューターの分野. (11/11 朝日新聞) 今週のコラム欄(下記)に全28項目を書き出した. 米エネルギー省 科学室 から PDFファイル(1.2M) が取得できる.
    • 日本育英会の奨学金 444億円回収不能
      特殊法人「日本育英会」の奨学金事業について会計検査院が調べたところ,少なくとも 444億円が「回収不能」と試算されたことがわかった.同会は来年4月に独立行政法人に 業務を引き継ぐ予定だが,新法人の財政基盤を悪化させる恐れもあり,検査院は6日, 「予想される債務超過への対応は必要かつ緊急な課題だ」と指摘し,同会に改善を求めた. (11/7 朝日新聞)
    • 国立大の通常入試,2006年度から前後期「一本化」可能に
      国立大学が入試を前期と後期に募集定員を配分して2回行う「分離分割方式」について,国立大学協会 は12日の総会で,各大学が,条件つきで通常の入試を前後期のどちらか一方に限ることができるよう 見直す申し合わせをした.現在の高校1年が受験する06年度入試から対応する. 分離分割方式は受験機会を増やす目的で行われているが,各大学から「後期は敗者復活戦となって 不本意な入学をする学生が多い」「推薦やAOの導入で機会が増え,前後期に分けるメリットがない」 といった意見が出ていた. (11/12 朝日新聞 )

  • 今週の「アメリカの次期20年科学戦略」

    米エネルギー省は10日,米国が今後20年間で優先するべき28項目の大型研究開発計画を発表した (米エネルギー省 プレスリリース). 21世紀前半も大型研究の分野で米国が世界をリードするために, 科学的な重要性や実現の可能性などをもとに優先順位がつけられた. 米エネルギー省 科学室 から PDFファイル(1.2M) が取得できる.項目だけを列挙すると以下のようになる.

    Near-Term Priorities最優先項目
    優先順位
    1 ITER 国際熱核融合実験炉計画
    2 UltraScale Scientific Computing Capability 最速スーパーコンピュータの開発
    3 Joint Dark Energy Mission 宇宙論におけるダークエネルギー研究
    3 Linac Coherent Light Source
    3 Protein Production and Tags
    3 Rare Isotope Accelerator
    7 Characterization and Imaging of Molecular Machines
    7 Continuous Electron Beam Accelerator Facility 12 GeV Upgrade
    7 Energy Sciences Network Upgrade
    7 National Energy Research Scientific Computing Center Upgrade
    7 Transmission Electron Achromatic Microscope
    12 BTeV
    Mid-Term Priorities
    優先順位
    13 Linear Collider
    14 Analysis and Modeling of Cellular Systems
    14 Spallation Neutron Source 2-4MW Upgrade
    14 Spallation Neutron Source Second Target Station
    14 Whole Proteome Analysis
    18 Double Beta Decay Underground Detector
    18 Next-Step Spherical Torus Experiment
    18 RHIC II
    Far-Term Priorities
    優先順位
    21 National Synchrotron Light Source Complex Upgrade-NSLS II
    21 Super Neutrino Beam
    23 Advanced Light Source Upgrade
    23 Advanced Photon Source Upgrade
    23 eRHIC
    23 Fusion Energy Contingency
    23 High-Flux Isotope Reactor Second Cold Source and Guide Hall
    23 Integrated Beam Experiment

     最優先課題は,日本,フランス,スペイン,カナダが誘致に名乗りを上げている国際熱核融合実験炉(International Thermonuclear Experimental Reactor, ITER)計画. 地上に小型の太陽をつくって発電に役立てる方法を探る計画で,参加各国が経費負担や建設場所で合意すれば, 米国も計画実現に向けて最大限の支援をする姿勢を示した.
     第2位となったのは,日本に世界一の座を奪われたスーパーコンピューターの分野. 現在最速なスーパーコンピュータは,日本の海洋科学技術センターが運営する 地球シミュレータである (NEC製で,10年前のスーパーコンピュータ級の計算能力(毎秒80億回,8Gflops)を持つ演算装置を 8個組み込んだ「計算ノード」(64Gflops)を640台結合し,並列処理をこなす.理論性能は40 Tflops, 実効性能は35 Tflops.). アメリカは,国を挙げて世界一の座を奪還する構えを表明したと言える.
     各計画に取り組むには予算化して議会の承認を得る必要があるものの,大統領が科学予算の配分を 検討する際に参考にされるという.

  • 今年の「しし座流星群」

     国立天文台・ 天文ニュース (682)によれば, 今年のしし座流星群は,期待できないという. しし座流星群は,その流 星のもとになる塵粒をまきちらす母親の彗星(テンペル・タットル彗星)が,太 陽に近づく前後数年の期間だけ活発になる性質を持っています.1998年に近づ いた母彗星の影響も少なくなり,活動のピークは過ぎている.
     Asherらによるダスト・トレイル・モデルが,精度の良い予報をすることが 2002年にも確認 されているが,その予報によると, 今年の出現のピークは日本時間で11月13日深夜か ら14日早朝にかけて(日本は観測適所だが,このピークで降ってくる流星は,500年以上前に母親の彗 星から飛び出した塵粒なので期待薄)と,19日9時頃と17時頃(日本から眺めること はできない). 日本では,18日深夜から19日早朝,あるいは19日深夜から20日早朝にか けて,しし座流星群に属する流星が散見される可能性は残されている.
     参照:NASA Leonid MAC流星電波観測国際プロジェクト, Lyytinen, E., van Flandern, T., Earth, Moon & PLanets 82-83,                             p.149-166(2000)


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2003/11/08
  • 今週のサイエンス情報

    • 【宇宙開発】ボイジャー1号,太陽系外へ
      1977年9月に打ち上げられた,惑星探査機「ボイジャー1号」は現在地球から約130億キロ (太陽からおよそ85AU)先を航行中であるが,太陽風(太陽から放出される荷電粒子の流れ)の 測定データから, 太陽風の影響が及ぶ限界点である「ターミネーション・ショック」(末端衝撃面)を通過 しつつあることがわかった.ボイジャーは,太陽系の外縁を越える初めての宇宙探査機になる. (下記のコラムも参照) 11/6 毎日新聞 11/6, Nature vol. 426 (review)
    • 【天文観測】「最も近い小銀河」発見,「最遠の銀河」発見
      英仏伊豪の研究チームは,太陽系からの距離が2万5000光年と,これまでに発見された銀河の中で 最も近いところにある小銀河を発見したことを報告した. おおいぬ座の方向にあり,我々の銀河系中心からの距離は4万2000光年. 94年に見つかった「いて座の小銀河」の8万光年よりもそばにある. どちらも我々の銀河系にのみ込まれつつある. 星の数は10億ほど. (11/5 朝日新聞
      国立天文台などのチームがハワイの「すばる望遠鏡」により,これまでで最も遠い, 約128億3千万光年離れた銀河を見つけた. 同望遠鏡自身が今年3月に更新した最遠記録を,さらに約300万光年だけ上回った. 外国チームの論文と比べると,「遠い銀河」上位10位のうち,今年, すばる望遠鏡による発見が公表されたものが9個を占めるという. ( 11/5 すばる望遠鏡ニュース
    • 【天文観測計画】大型電波干渉計ALMA 着工
      欧米が共同で推進し,日本も協力することになっている, アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計ALMA(Atacama Large Millimeter Array) が,7日,南米チリで着工した,と伝えられた.日本にとってはハワイの「すばる望遠鏡」に次ぐ 大型天文計画である.2007年頃に部分運用を開始し,2011年末に本格運用を開始することを予定している. 生まれたての銀河や別の太陽系が生まれる様子・地球外にある有機分子など,光では見えない情報が 得られるものと期待されている. (Atacama Large Millimeter Array (ALMA), 国立天文台ALMA計画ページ
    • 【計算科学】ゲノム創薬研究向け超並列シミュレーションサーバーの実証実験を開始
      富士通および富士通研究所は5日,遺伝子の全体情報を示すゲノムを基に新薬を開発する「ゲノム創薬」で, 開発期間を大幅に短縮することが可能な超並列シミュレーションサーバ「バイオサーバーBioServer」を開発したと発表した. 一筐体に最大1920個のCPUを搭載可能,個々のCPU上でタンパク質の構造予測や結合予測を行う シミュレーションプログラムを並列に動作させることができ, 従来の創薬研究のボトルネックであった化合物最適化の研究効率が飛躍的に向上するという. ( 11/5 富士通プレスリリース 11/6 毎日新聞2003/2/28 ZDnet
    • 【生命科学倫理】クローン人間禁止条約の草案作成,2年先送り
      国連総会第6委員会(法律)は6日,クローン人間禁止条約の内容を方向付ける決議案の採決を, 2005年まで2年間延長する動議を可決した. クローン技術の人間への応用の全面禁止を求める米などと,医療目的のクローン胚研究の 除外を求める英国,日本などの主張が対立しているためで,同条約の策定は大幅に遅れることになる.
      国連総会は一昨年,クローン人間禁止条約づくりを求める決議案を採択した. 加盟国ほぼすべてがクローン人間(個体)の作製禁止に賛成しているが, 再生医療用のクローン胚作製も一律に禁止するか否かで意見が分かれ, 委員会には全面禁止と部分禁止の二つの決議案が提案されていた.
      このためイスラム諸国会議機構を代表してイランが提出した,採決は時期尚早でさらに論議を 尽くすべきだとする動議を,賛成80,反対79で可決した.日本は賛成に回り15カ国が棄権した.
      これまでの協議では,全面禁止案に約60カ国が賛成,部分禁止案に20カ国が賛成を表明し, 国際社会の見解は二分されていた.米は宗教右派を支持基盤とするブッシュ政権の意向で, 全面禁止条約へ向けた決議案の採決を強く求めていた. (11/7 朝日新聞 原文のまま)
    • 【技術】マイクロオリガミ(3次元微細構造自動組立作成方法)の位置制御
      通信デバイスの極小化やバイオ技術の進展に伴い, マイクロ電子技術システム(Microelectromechanical systems, MEMS)の重要性が増しているが, 微細構造の組立法として,関西文化学術研究都市のATR環境適応通信研究所が開発した 「マイクロオリガミmicro-origami」技術がある. 半導体の薄膜を折り紙のように自動立体加工する技術である(下記の用語解説参照). ひとたび,整形できれば,それを微小移動する技術が必要になるが,理論ははっきりとは 分からないものの,ヘリウムネオンレーザーを当てることによって思い通りの位置に制御できることが 最近報告されたという. (J. M. Zanardi Ocampo et al., Applied Physics Letters, 3 November 2003) 11/5 Physics News
      用語解説「マイクロオリガミ」 関西文化学術研究都市のATR環境適応通信研究所が,2001年に開発した半導体加工技術. ガリウム・ヒ素,アルミニウム・ヒ素など種類の異なる半導体を,50〜5000オングストローム (1オングストロームは 100億分の1メートル)程度の厚さに何層か重ねた多層膜をつくる. 各半導体は原子間距離が異なるが,薄膜形成過程で無理やり均一にさせられるため, “ひずみ”が生じる.膜の一部をエッチング処理で溶かすと,周囲の薄膜が元の状態に戻ろうと折れ曲がる (). 同研究所はこの性質を利用し,どのようなエッチング処理をすれば,どのように折れ曲がるかを計算. ミクロン(1ミクロンは1000分の1ミリ)単位で,思い通りに半導体の加工ができるようになった. 金属,絶縁体などにも応用可能で,同研究所は「極小の半導体加工製品の大量生産が可能になる」としている. 2001/6/18 毎日新聞 適応コミュニケーション研究所

  • 今週のサイエンティスト情報

    • 11月5日に配信された大学情報 記事から,題目のみ.
      【注目記事】 国立大89校,中期目標の素案公表 (当サイト10/24 既報
      【大学改革】(1)北海道大が公共政策大学院を開設へ
      【大学改革】(2)秋田の大学・短大など8校が単位互換協定
      【大学改革】(3)山形大が教員給与に「評価主義」検討へ
      【大学改革】(4)東京大がファンド運営会社設立へ
      【大学改革】(5)横浜市大,全教員に任期,年俸制導入へ
      【大学改革】(6)名古屋工業大,学生独自のカリキュラムで学べる新制度
      【大学改革】(7)立命館大と草津市が包括的協定へ
      【トピック】(1)法科大学院の適性試験追試に8049人出願
      【トピック】(2)授業料,東京でも早稲田大など4大学に返還命令
      【トピック】(3)センター試験出願締め切り−出願者減少の見通し
      【トピック】(4)センター試験英語リスニング,全受験生にイヤホン配布案
      【トピック】(5)8大学が指導要領を超える問題出題へ−河合塾調査
      【トピック】(6)オリックス会長ら,大学改革支援のNPO設立へ
      【トピック】(7)河合塾と三菱総合研究所,産業貢献度の大学ランキング
      【トピック】(8)酒田短大,土地・建物の競売入札者なし
      【海外大学事情】 (1)米国−留学生から登録料100ドル徴収を検討(当サイト11/2 既報
    • 3学会が合同で 総合科学技術会議に改善要求
      政府の総合科学技術会議が進める政策に,基礎研究軽視の風潮が見られるとして, 日本物理学会 (会員数約2万人), 日本天文学会(同約3000人), 日本地質学会(同約5000人)は6日, 同会議に改善を求める声明文を出したことを明らかにした.分野の異なる学会が合同で声明を出すのは異例だという. 声明文は4日付で,「速効的な技術革新に重点が置かれ,科学技術の根底を支える基盤的経費が 軽視されかねない状況だ」と主張している. ( 11/7 毎日新聞
    • 科学者,南極観測の継続を訴える
      南極観測隊員や研究者220人が7日,東京都千代田区で「南極観測の継続を訴える集い」を開いた. 現在の南極観測船「しらせ」は就航して21年.後継船建造の予算をつけないと, 戦後の日本に夢を与えた南極の昭和基地との交通が途切れかねない,と集まった. 後継船の建造には400億円,搭載ヘリコプター2機は120億円かかる. 参加者は「観測を中断すれば日本の地球環境問題に対する姿勢を国内外から問われる」と, 観測継続と新船建造を求める宣言を発表した. 11/7 朝日新聞

  • 今週の「太陽系の外縁」

    惑星探査機ボイジャー1号が,太陽系の圏外に出たという.太陽系はどこまでが太陽系か.

    • 古典的なイメージでは,太陽系は,冥王星軌道までとなる.太陽ー地球間の距離(1億5000万キロ)を1AU (天文単位, astronomical unit)として,39.53 AU.
    • 太陽風プラズマ(太陽から放出される荷電粒子の流れ)の勢力範囲「太陽圏」は,まだ先まで続く. 太陽風プラズマが超音速から亜音速に遷移する限界点を「ターミネーション・ショック」(末端衝撃面)と呼ぶ. 今回のボイジャー1号が通過したのはこの位置で,データから地球からの距離は約130億キロ(太陽からおよそ85AU) と推定された. ターミネーション・ショックは太陽風が恒星間ガスにぶつかって急激に減速される地点. 平均時速112万キロで放出される太陽風が同16万キロまで減速していることが確認されたという.
    • 太陽系の宇宙空間である「太陽圏」は,ターミネーション・ショックの外縁に「ヘリオシース」(太陽圏の覆い)と呼ばれる空間が広がり,「ヘリオポーズ」(太陽圏の果て)という境界を経て恒星間空間につながる.
    1977年9月に打ち上げられたボイジャー1号は, 地球外生命との遭遇を想定し, 55カ国語のあいさつやカーター元米大統領のメッセージなどが記録された金製のレコードが搭載された. 設計寿命は5年だったが,観測は2020年ごろまで継続できる見通しで,それ以前にヘリオポーズを越えるのは確実という. (11/6 毎日新聞)

    ところで

    • 星間空間では,物質は均一に広がっているのではなく所々に星間雲を形成していることが知られている. 我々の太陽圏は局所星間雲 (LIC = Local Interstellar Cloud)の内部に位置していると考えられている.
    • LICは我々の太陽圏に対し25km/sほどの速度で運動しているので,LICを構成する中性粒子成分, 特にヘリウム原子はプラズマ・磁場の影響を受けずに太陽圏の奥深く,1AU以内まで侵入する.
    • 太陽近傍ではヘリウム原子は太陽紫外線によって有限の確率で電離を受けイオンとなる.こうして生成されたイオンは太陽風の電磁場に捕まって太陽風とともに流されるので「ピックアップイオン」と呼ばれる.
    • 「ピックアップイオン」は,末端衝撃波面で数十MeV(太陽圏の内部では数百MeV)に加速され,異常宇宙線成分を発生させる と考えられている.
    • 最近,火星探査機「のぞみ」と地球磁気圏探査衛星GEOTAILのイオンデータから, ピックアップイオンの速度分布の研究がすすめられている. 従来ピックアップイオンは電離後直ちにピッチ角散乱を受けて磁場の周りに等方的(シェル状)に分布すると信じられていたのだが,GEOTAILの観測により,シェルと同程度の頻度でトーラス状の分布をしていることが見いだされた.これはピッチ角散乱の効率が従来想定されていたほど高くないことを示し,イオンの空間分布形状が重力収束コーンの形状と全く同じとする従来のモデルの前提を覆す結果になったという. 2002/12 東京大学ニュース
    • 探査機ボイジャー1号での計測によれば, に搭載された機器で計測された,外部太陽圏における高エネルギー粒子強度の大幅な増加について報告する.我々は,この探査機が 2002年8月1日頃,およそ85AUの距離(日面緯度はほぼ北緯34度)で,超音速の太陽風から脱出して,(おそらく末端衝撃波面を越えて)亜音速領域に突入し,そのおよそ200日後,太陽からほぼ87AUの距離で超音速の太陽風に再突入したらしい. Krimigisらは,推測される末端衝撃波面で加速されたイオンの組成が,宇宙線異常成分と星間ピックアップイオンの組成であることを示している. 11/6, Nature vol. 426 (review)/ (article, S.M. Krimigis, et al)

  • 今週のホームページ探検

    明日は衆議院議員総選挙. 大急ぎで,各党のマニフェストおよび政策集へのリンク. asahi.comには 各マニフェストの表紙一覧あり.
    解散時議席数(475)選挙結果(11/10記入予定)
    自由民主党 小泉改革宣言 247小選挙区168議席+比例区69議席=237
    民主党 政権公約政策集 137小選挙区105議席+比例区72議席=177
    公明党 マニフェスト 31小選挙区009議席+比例区25議席=34
    日本共産党 政策 20小選挙区000議席+比例区09議席=9
    社会民主党 政策 18小選挙区001議席+比例区05議席=6
    保守新党 総選挙政策 9小選挙区004議席+比例区00議席=4,解党,自民へ吸収
    諸派 13無所属の会1+ 自由連合1+ 無所属11=13

    ついでに選挙関連サイト


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2003/11/02
  • 今週のサイエンス情報

    • [宇宙物理]SDSSが宇宙地図 (A Map of The Universe)発表
      28日, Sloan Digital Sky Surveyプロジェクトは, 20億光年先までの銀河20万個の位置を詳細に測定した結果を発表した (10/27 SDSS). 結果の1つは,長さ13.7億光年に及ぶ巨大な銀河団の壁構造の発見で, Sloan Great Wall (Sloan万里の長城,Sloanはスポンサーの名前)と名付けている (Preprint astro-ph/0310571) . 今年の2月に発表された,Wilkinson Microwave Anisotropy Probe (WMAP)衛星による 宇宙背景輻射のデータと合わせると,Hubble定数は,70 +- 4,宇宙全体の物質によるエネルギーの割合は 30 +- 4 %,暗黒物質候補としてのニュートリノの質量の上限は0.6 eV,宇宙年齢は, 141 +- 10億年ということになるという. (Preprint astro-ph/0310723).
    • [太陽物理] 肉眼で見えるほどの黒点,フレア大爆発,日本でもオーロラ観測
      最近,太陽表面に,肉眼でも観測できるほどの巨大な黒点群が現れている (spaceweather.com). 黒点群全体の大きさは,太陽の直径の10分の1ほど(地球の直径の 10個分に相当し,黒点群全体では地球が100個ほど入る.木星よりも大きい).  太陽黒点は太陽活動が活発になるときに多く現れる.太陽活動は 2000年から2001年に活動期を迎え,現在は極小期に向かっているが,これだけ大きな黒点群が 現れるのは非常に珍しい.
       日本時間28日20時10分頃,かなり大規模なフレア爆発が発生した. 強力なX線や電波・莫大な量の高エネルギーの粒子が放出されるので, 地球に到達すると電波通信を混乱させたり,電子機器 を誤作動させるなどの磁気嵐の原因となる.
       大規模な磁気嵐は,オーロラ活動も活発化させる. 日本でも『低緯度オーロラ』が見られたという報告が北海道陸別町(銀河の森天文台)や 北海道名寄市(木原天文台)で報告された.(23日夕方の小規模なフレアに伴うものが 29日ごろ出現したと考えられている).また,  低緯度オーロラは極地域で見られるカーテン状のものとは異なり,酸素の発 する暗赤色の光が,北の空であまり動きを見せずに幕のように広がっているこ とが多いようだ. 29日以降数日間,茨城県里美村,山梨県長坂町,長野県原村など, ほぼ北緯36度以北の地域で観測された,との報道もある. (天文台ニュース 10/27/ 10/29/ 10/31, 朝日新聞 11/1/ )
    • [宇宙開発] 環境観測技術衛星「みどり2」 運用断念
      電気系統の故障により,10月25日より制御不能になっていた日本の 環境観測技術衛星「みどり2」の運用を断念した,と宇宙航空研究開発機構(JAXA) が31日報告した.開発費は約730億円(日本はそのうち約515億円),設計寿命は3年だったが, 打ち上げから10カ月での運用停止となった. 96年には先代の「みどり」も打ち上げ10カ月後に機能停止しており, 環境研究や日本の宇宙開発の信頼性に影響を与えそうだ.今回は, 頻発しているフレア(太陽の爆発現象)が原因で,電子部品に障害をもたらしたとの見方が出ている.
       JAXAは,宇宙空間で他の衛星の大量データを地上に中継する人工衛星「こだま」でも 姿勢制御用装置の一部で異常な信号が発生し,運用を一時的に中断している.これも 太陽フレアの活動が原因としている. (毎日新聞 10/30/ 10/31
    • [惑星物理] 小惑星「べスタ」に水分含有鉱物
      火星と木星の軌道の間を回る小惑星「べスタ」に水分を含む鉱物が存在することが分かったと, 宇宙航空研究開発機構などの国際研究グループが29日発表した.ベスタは直径約500キロで, 小惑星としては3番目に大きい.大型の小惑星から水が見つかったのは初めてで, 生命の誕生につながる水の起源や小惑星の形成を探る手掛かりになるという. 10/30 毎日新聞
    • [計算科学技術] 量子コンピューターの論理演算回路を開発 NECと理研
      NEC基礎研究所と理研フロンティア研究システム(巨視的量子コヒーレンス研究チーム:リーダー 蔡 兆申(ツァイ・ヅァオシェン))の共同研究グループは, 固体素子で構成される量子コンピュータの基本素子2個を結合することで"量子論理演算回路"を構成し, その動作に世界で初めて成功した,と論文発表した. 量子コンピューターの基礎となる2進数で2けた(2量子ビット)の論理演算回路をつくり,数回の動作を確認したという. 30日発行の英科学誌Natureに速報が掲載される.
      NECは99年に1量子ビットの同回路を完成させている.次の目標は, これらの回路を組み合わせて連続的に動作させ,簡単な計算ができるようにすること. 現在のコンピューターは,10けた(10ビット)で1024通りの数字を表せるが,1度に入出力できるのはそのうち一つの数字だけ.これに対し量子コンピューターは,10量子ビットで1024通りの数字を1度に入出力できる.けた数を増やすと,処理できるデータ量が爆発的に増える.20量子ビット程度まで実現すれば,現在最速のスパコンの能力を追い越すと予想されている. 10/30 朝日新聞 理化学研究所ニュース
    • [科学技術] 流体から発電する方法の開発
      カナダ・Alberta大学のKostiukらは,水をガラス円盤の小さな管を通すことにより, 直接発電できることを報告した. PhysicsWeb 10/21. 米国MITのLivermore のLivermoreらは,数センチメートルスケールの流体管を用いて, これまでのどの回転型マイクロモーターより発電能力の大きい装置を作成した,と発表した. PhysicsNewsUpdate 10/28
    • [科学技術] 光子1つに反応する超伝導検出器
      米国Jet Propulsion LaboratoryのZmuidzinasらは,超伝導アルミニウムを素材に使う 検出器を用いて,光子1つ1つのエネルギーを測定できる検出器を開発した,と報告した. 現在のCCDカメラcharge-coupled detectorsよりも精度の良い天文観測への応用が期待される. PhysicsWeb 10/22 (P Day et al. 2003, Nature 425 817).

  • 今週のサイエンティスト情報

    • 2005年は国際物理年 (World Year of Physics)
      Einsteinによる1905年の物理学の革命から100年を記念して,2005年は国際物理年と なるが,その組織委員会の公式ページが公開された. http://www.physics2005.org. 学生や一般への物理の啓蒙活動を目的にしており,現在は 各国の物理に関する組織や団体にイベントを募集している状態. Einsteinの小史もある.
    • 米,海外留学生から登録料100ドル徴収を検討
      米政府は米国に留学する学生,研究者などから100ドル程度の登録料を徴収する方向で検討を始めた. 今年から運用を開始した留学生情報管理システム(SEVIS)の運営費を捻出するのが目的としている. 留学生情報管理システムは米国の大学などに留学している国外からの学生,研究者の情報を 一元的にコンピューター登録・管理するために米・国土安全保障省が導入した. ビザの有効期限が過ぎているのに米国に滞在し続けている留学生などを監視するのが目的. テロ対策の一環で,留学生や研究者にとっては,査証(ビザ)発給手続きが煩雑になっているのに加え, 新たな金銭的負担も強いられることになる. 10/23 日経新聞

  • 今週の本棚

    • 「さらば外務省」天木直人,講談社,2003 《amazon.co.jp》 《bk1
    • 「お笑い外務省機密情報」テリー伊藤,飛鳥新社,1997 《amazon.co.jp》 《bk1
    アメリカでビザ延長やパスポート更新で困っていた時,領事館の人は全く 真剣に取り合ってくれなかったことを思い出す.日本人に冷たい外務省 組織を思い出し,外務省はいらない,と述べる天木氏の主張には共鳴する. (天木氏は辞める時期を逸したという朝日新聞の書評(11/1)もあったが,これにも同意). しかし,内部改革がこうも進まない組織はどうしたもんなんでしょうねえ.

  • 今週の身の回り

    今週は学会で京都に出張していたが,本来の私の研究の本筋のテーマではなかったため, 関係しないセッションはお休みさせていただいて,せっせと来年からの新居探しの不動産屋まわりに いそしんだ.「京都市に住みたい」「公園が近く」 「犬が飼いたい」「雪が積もって遊べる所がいい」 「図書館は当然近くに」などなど家族の主張を聞き入れているときりがない. 家賃と通勤の兼ね合いを考えて,朝夕,京都中を歩き回ったが,どこも家賃が高い. 嵐山で憧れの物件に出会ったのだが,予算オーバーで家主さんと家賃交渉をしているうち, 第三者に契約を奪われてしまったものもある. 結局,長岡京市の平屋に決めた.私の身の丈にあったような家で(扉に頭をぶつける意味も含む), いつかわが家を,という将来へ向けた勤労意欲を喚起させる,古くて小さい家である. ここ数ヶ月,毎日インターネットで物件探しをしていたが,漸くこれで 落ち着ける.しかし,わが家は引越屋泣かせの蔵書量.次の課題は荷造りか...
    来週から毎週日曜に更新予定.


2003年10月以前の分はここ


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