物理の研究分野の流行を計る指標の提案が,物理のプレプリントサーバに
論文として投稿され
( M.G. Banks, physics/0604216),
イギリス物理学会(IOP) ニュース PhysicsWeb に
紹介された.
昨年の8月に,Hirschによる,論文の被引用率を測るh-index (当サイト 2005/08/22)を, 研究者個人にではなく, 研究分野に適用したもので,被引用率が大きい分野ほど, hot topicであろう,という考えに基づく. これをBanksは,h-b indexと命名している. h-index 10 は,個人の10本の論文が少なくとも10本に引用された,という指標であったので, h-b indexも同様である. また,さらに,h-b index を論文の出版経過年数で割った m-index も計算し, 分野の流行の継続性も調査している.
Banksによれば,m>3 であれば,hot topicと見なすことができ, mもh-bも大きな値であれば現在もhot topicであると 結論できるという.逆にh-bが大きくてもmが小さければ,古いトピックになる. 物理分野で,m-indexの大きい順にtop 10のトピックを並べると,次のようになるそうだ.
トピック | m-index | h-b index |
カーボンナノチューブ(carbon nanotubes) | 12.85 | 167 |
ナノワイヤ(Nanowires) | 8.75 | 105 |
量子ドット(quantum dot) | 7.84 | 149 |
フラーレン(fullerenes) | 7.78 | 140 |
巨大磁気抵抗(giant magnetoresistance) | 6.82 | 116 |
M理論(M−theory) | 6.58 | 79 |
量子計算(quantum computation) | 5.21 | 73 |
テレポーテーション(teleportation) | 5.08 | 61 |
超弦理論(superstrings) | 3.96 | 99 |
大学院の学生が研究テーマを選ぶときに重宝だ,という結論であるが,果たしてそういう動機で 良いのだろうか.ちなみにBanksは物性物理を専攻する大学院生だそうである.