【受賞報道】日本国際賞

国際科学技術財団は, 日本国際賞の受賞者を発表した. 今年の授賞分野は, [生産「基礎研究が発信する革新的デバイス」] と [生命保全技術・生命環境「共生の科学と技術」] の2分野.

[生産]分野は,Albert Fert(アルベール・フェール,フランス)と Peter Gruenberg(ペーター・グリュンベルク,ドイツ)の2人で,贈賞理由は, 「巨大磁気抵抗効果(GMR)の発見と革新的スピンエレクトロニクス・デバイスの創生」. 2人は,1988年に独立に,わずかな磁界を加えるだけで電気抵抗が大きく変化する現象である 「巨大磁気抵抗効果(GMR, Giant Magnetoresistance) 」を発見した.鉄とクロムの層で 人工磁性格子を作り,外部磁場により電気抵抗を測定したもので,その後のスピンエレクトロニクスと呼ばれる電子のスピンを利用したデバイスの発展への契機となった. スピンエレクトロニクスのパラダイムは、電気伝導現象と磁気現象を結びつける多くの基礎研究とこの効果を用いた不揮発性メモリ(MRAM)などの革新的な応用分野の発展を促し, GMRの発見から10年ほどのうちに、GMR効果を用いた小型大容量ハードディスクがパソコン、ビデオレコーダ、携帯音楽プレーヤー等のIT機器に組み込まれ普及した.

[共生]分野は,Peter Shaw Ashton(ピーター・ショウ・アシュトン,イギリス).贈賞理由は, 「人と共生する熱帯林保全への貢献」. 熱帯林は陸上で生物多様性がもっとも高い生態系であるが,最近数十年間で著しく減少・劣化しており,その保全・修復が深刻な環境問題となっている.アシュトン氏は, アジア熱帯林の主要樹木であるフタバガキ科植物をはじめとする樹木の分類と系統、植物地理などの 森林の生態学的研究を通じ, 気候や土壌などの環境要因と熱帯林の分布の因果関係を発表することにより,熱帯林と人間の持続的な共生にむけて不可欠かつ重要な貢献を行った.

賞金は各賞5000万円,複数受賞者の場合は等分される.また,来年度の授賞対象分野が, [情報・通信「情報通信の理論と技術」] と [生命科学(医術)「ゲノム・遺伝医学」]  であることも発表された.

これまでの受賞者リスト
日本国際賞2007 Fert, Gruenberg
日本国際賞2007 Ashton