ニセ科学と対峙するココロ

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岩波の「科学」 2006年9月号は,「疑似科学の真相/深層をよむ なぜ信じてしまうのか」という特集である.なかなか面白い. 正統な(or 正当な)科学から考えればとんでもない事実が世の中に多く広がっており,その原因を探るのが主旨ではあるが,逆に,そんな話があったのか,と逆読みで楽しめてしまう.ヤブヘビとはこういうことを言うのだろう。

解説では「血液型性格判断」「マイナスイオンは健康にいい」「ゲームをしすぎるとゲーム脳」「民間のアトピー療法」などなど,ちょっと科学っぽいものに騙されてしまう危険を紹介している.「マイナスイオン」商品を発売しているメーカーの言い分は,「マイナスイオンを発生させることは事実だが,それを健康に良いとは宣伝していない」というもの.儲かる者がいるから,こういう話は尽きることがないのだろう.

アメリカでは,創造論の変化形として「生物の進化の背後には何らかの知的な計画があるはずだ」というIntelligent Design説が台頭しているらしい.神という言葉を出さないのがミソで,この論陣で進化論と張り合う勢いだとか.「人類は月に行っていない」(国家の謀略説)とか,「宇宙人は共産主義者である」(宇宙人は地球に来れるほどの素晴らしい科学技術力を持つのに,UFOはよく墜落する.高度な技術を持ちながら品質管理が悪いのは共産主義だからだ)という説は,まだ可愛いものの,ID説は宗教的な道具として強硬に推進される可能性があるから厄介である.

昨今,水に優しい言葉をかけてから凍らせると,結晶の形が変わる,という話が広まっているらしい.本屋で写真集を見つけたときは,単なる「とんでも本」の類なので,いずれと学会が,とっちめてくれるだろう,位に考えていたのだが,最近では道徳の時間に利用する小学校もあるとか! 幸い,ウチの子供たちの小学校は無事だったが,非科学的なことを平然と受け入れてしまう教師側や保護者側の土壌の問題でもあろう.

この話をしたら,知人が,今年3月の物理学会でのシンポジウム 「『ニセ科学』とどう向き合っていくか?」のページを教えてくれた.企画した田崎晴明氏は, 「水は答えを知っている」書評 もwebに掲載している.ちょっと長いが,教育に携わる人には是非一読していただきたいものだ.

「ニセ科学を批判し、社会に科学的な考え方を広めるのは学会の重要な任務の一つだ」とする佐藤勝彦物理学会前会長の言葉もあるが,任務はすべての教育者にある.

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このページは、shinkaiが2006年9月13日 12:50に書いたコメントです。

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