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Einstein1905.info :: What's New in Science?

2006年2-8月 最新版はここ,   これまでの索引はここ

物理/天文/宇宙関係のニュースを中心に,ここにコメントします.2006年4月より, blog形式として形式を変更しました.

前回更新から,半年以上,期間が空いてしまった.このサイトの更新を楽しみにされていた方(もしいらっしゃったら),申し訳ありませんでした. 無事に転職し,職も全うし,慣れてきたところで,漸くこのサイトも 再開したい.空いた期間は徐々に埋めていくとして,とりあえず,不定期 blog形式で.

2006年 開く 閉じる

年月日科学の進展研究と教育他いろいろ 月下の独迹
** 2006/08/30     【イベント】2009年は国際天文年
** 2006/08/29     【おすすめ】失敗知識データベース
** 2006/08/25     【惑星科学】冥王星,惑星の定義から外れる
** 2006/08/24     【宇宙物理】ダークマターの直接証拠
** 2006/08/23     【受賞報道】フィールズ賞,ネヴァンリンナ賞,ガウス賞
** 2006/08/20     【研究評価】科学的創造性を測る C-index
** 2006/08/17     【惑星科学】太陽系惑星の新定義,惑星3つ増えるか
** 2006/08     【アップル】タイムマシン,できる
** 2006/07    【イベント】計算尺をつくる
** 2006/07    【イベント】湯川・朝永 生誕100年
** 2006/07     【科学政策】NASA科学予算の大幅削減
** 2006/06     【宇宙物理】GravLens Issue 7
** 2006/06     【宇宙物理】ブラックホール降着円盤と磁場
** 2006/05     【物理学史】EinsteinとPhysical Review
** 2006/05     【科学政策】取り残された数学研究
** 2006/05     【研究評価】研究分野の流行を示す m-index
** 2006/04     【基礎物理】陽子/電子の質量比は120億年で若干変化
02/07
01/30
01/11
01/02

2005年 開く 閉じる
2004年 開く 閉じる
2003年 開く 閉じる

by Hisaaki Shinkai


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2006/08/30 前回へ / 次回へ / ページ先頭へ
 

今日のメイリングリストから

  • 【イベント】2009年は国際天文年
    2009年を「国際天文年 (The Year of Astronomy)」とすることが,決まりそうだ。 国際天文学連合 (IAU) の働きかけにより,既にUNESCOの支援が決定し,国際連合でも支援決定の直前にあるそうだ. 2009年は,ガリレオ・ガリレイが初めて望遠鏡を用いて天体観測をしてから400年の節目に あたる.「地球が宇宙で唯一の存在ではないことが認識された年」( IAUの提案文書(2005年,pdf))というのが理由.

 
2006/08/29 前回へ / 次回へ / ページ先頭へ
 

web記事から

  • 【おすすめ】失敗知識データベース
    科学技術振興機構(JST)が, 英語版失敗知識データベースの一般公開を開始 した.知らなかったのだが,日本語版の 失敗知識データベース(http://shippai.jst.go.jp/)は, すでに存在していて,その英語版ということらしい. 上記のwebには,「単なる事故事例データベースとは異なり、失敗事例を分析して教訓を抽出し、知識として活用できるようなデータベース」という位置づけがある.

    例えば,「航空・宇宙」分野では, 「H-2Aロケット6号機打上げ失敗」や「スペースシャトル・コロンビア号の帰還失敗」などの有名な事故をはじめとして60数件が データベース化されていて,それぞれに,「事象,経過,原因,対処,対策,知識化,後日談, よもやま話,シナリオ,情報源,死亡者数」などが細かく記載されている.

    感心したのは,「失敗まんだら」という 名の3枚の図があり,「失敗原因の分類」「失敗行動の分類」「失敗結果の分類」の各図には構造化された要因が配置され, この要因キーワードから逆に失敗実例を検索できるようになっていることだ.原因が「無知」にあったのか 「未知」にあったのか,それとも「不注意」か「誤判断」か...自分のことなら耳が痛くなりそうだが,これだけ 系統化されていれば,今後の判断も容易になりそうだ.

    失敗に学ぶ,ことを目標に, 失敗知識の伝達をこのような国家プロジェクトとしてまとめ,公開していることは,素晴らしいことだと思う. データベース化されているのは,産業・工業系が主であるが,このような構造化やデータベース化は,もちろん 日常にも活かすことができよう.今回はなんだか教育的になってしまった. 失敗・反省が趣味の方にはチョーお奨めのサイトである.


 
2006/08/25 前回へ / 次回へ / ページ先頭へ
 

今日のニュースから

  • 【惑星科学】冥王星,惑星の定義から外れる
    チェコのプラハで開催されていた国際天文学連合(IAU)総会が, 太陽系の惑星の定義を投票により最終決定した.新定義により,冥王星は惑星の定義から外れ, 太陽系の惑星は,「水金地火木土天海」の8惑星となった.

    新しい定義は,以下の通り.(8/24 国立天文台astro topicsより.原文は,IAU2006のページにあり.)
    決議 RESOLUTIONS
    国際天文学連合はここに,我々の太陽系に属する惑星及びその他の天体に対 して,衛星を除き,以下の3つの明確な種別を定義する:
    The IAU therefore resolves that planets and other bodies in our Solar System be defined into three distinct categories in the following way:

    1. 太陽系の惑星とは, (a) 太陽の周りを回り, (b) 十分大きな質量を持つので,自己重力が固体に働く他の種々の力を上回って重力平衡形状(ほとんど球状の形)を有し, (c) その軌道の近くでは他の天体を掃き散らしてしまいそれだけが際だって目立つようになった天体である.
      [惑星とは,水星,金星,地球,火星,木星,土星,天王星,海王星の8つである.]

      A planet is a celestial body that (a) is in orbit around the Sun, (b) has sufficient mass for its self-gravity to overcome rigid body forces so that it assumes a hydrostatic equilibrium (nearly round) shape, and (c) has cleared the neighbourhood around its orbit.
      [The eight planets are: Mercury, Venus, Earth, Mars, Jupiter, Saturn, Uranus, and Neptune.]

    2. 太陽系の dwarf planet とは, (a) 太陽の周りを回り, (b) 十分大きな質量を持つので,自己重力が固体に働く他の種々の力を上回って重力平衡形状(ほとんど球状の形)を有し, (c) その軌道の近くで他の天体を掃き散らしていない天体であり,(d)衛星でない天体である.
      [基準ぎりぎりの所にある天体を dwarf planet とするか他の種別にするかを決めるIAUの手続きが,今後,制定されることになる]

      A dwarf planet is a celestial body that (a) is in orbit around the Sun, (b) has sufficient mass for its self-gravity to overcome rigid body forces so that it assumes a hydrostatic equilibrium (nearly round) shape2, (c) has not cleared the neighbourhood around its orbit, and (d) is not a satellite.
      [An IAU process will be established to assign borderline objects into either dwarf planet and other categories.]

    3. 太陽の周りを公転する,衛星を除く,上記以外の他のすべての天体は,Small Solar System Bodies と総称する.
      [小惑星,ほとんどのトランス・ネプチュニアン天体(海王星より遠方にあって太陽の周りを回る天体,エッジワース・カイパーベルト天体とも言う),彗星,他の小天体]

      All other objects3 orbiting the Sun shall be referred to collectively as "Small Solar System Bodies".
      [These currently include most of the Solar System asteroids, most Trans-Neptunian Objects (TNOs), comets, and other small bodies.]

    冥王星についての決議 国際天文学連合はさらに以下の決議をする:
      冥王星は上記の定義によって dwarf planet であり,トランス・ネプチュニアン天体の新しい種族の典型例として認識する. IAU Resolution: Pluto  The IAU further resolves:
    Pluto is a dwarf planet by the above definition and is recognized as the prototype of a new category of trans-Neptunian objects.

    この決議に至る対抗案としては,すでにこのサイトでも報告した「セレス,カロン,2003UB313を含めて12惑星とする」案と,「冥王星を含めて現在の9惑星とする」案があり,最終的には8惑星か9惑星かで投票が行われた. 冥王星を惑星に残す案は,アメリカ人に多かったそうだ.冥王星の発見者がクレイド・トンボー Clyde W. Tombaugh というアメリカ人だから.

    冥王星は,1930年に発見された.当時,海王星の位置が計算から予測される位置からずれてしまう原因として,もう一つの惑星の 存在が理論的に予言され,実際に望遠鏡を向けて発見した,というエピソードがある.この事実をもって,「Newton力学の勝利」とも呼ばれているという.発見当初は,冥王星の質量は地球の半分程度と見込まれていたが,観測技術の進展により,現在では地球の 1/5 程度であることが知られている.他の冥王星レベルの小惑星の発見が相次ぎ,惑星の定義そのものが問題となっていた.

    冥王星を惑星としていいのかどうか,という意見は10年前から良く聞くようになっていた.冥王星の軌道がカオス的である,という 問題も,他の小惑星からの影響を受け易いものだから,という理由で落ち着くのだろうか.
    ホルスト Holstの組曲「惑星」は, 1920年代に作曲されたため,当時発見されていなかった「冥王星」という曲はない.結局,これで正しかったことになる.

    「惑星」の定義、総会での議論続く (8/21 国立天文台 アストロ・トピックス (231))
    「惑星」の新定義案、総会での採決へ (8/24 国立天文台 アストロ・トピックス (232))
    (速報)太陽系の惑星の定義確定 (8/24 国立天文台 アストロ・トピックス (233))
    冥王星外し,惑星数8に 国際天文学連合が新定義 (8/25 朝日新聞 朝刊1面トップ)
    冥王星除外に教科書困惑、プラネタリウム歓迎 (8/25 朝日新聞 朝刊)

    朝日新聞より無断転載.

    2006/8/28追記
    日本惑星科学会は, 「惑星の定義」に関する声明文を発表した.今回の経緯に関する状況説明が載っている.
    天文学会のメーリングリストでは,「今後,関係学会/機関で,具体的な対応に関する協議が行なわれる」とのこと.

    2006/8/31追記
    Holstの組曲「惑星」には,冥王星がなかったが,2000年にColin Mathewsが「冥王星Pluto - The Renewer」という曲を追加で作曲し,最近の「惑星」CDには収録されているものもあるのだそうだ.


 
2006/08/24 前回へ / 次回へ / ページ先頭へ
 

今日のニュースから

  • 【宇宙物理】ダークマターの直接証拠
    8/23 朝日新聞が 『暗黒物質の存在示す「直接証拠」とらえた NASA発表』という記事を掲載. Chandra衛星のページでは, NASA Finds Direct Proof of Dark Matterの記事が ある.(Hubble望遠鏡のサイトも同じ記事).

    二つの星団が過去に衝突してできたと考えられる銀河星団 1E 0657-56 を,チャンドラX線観測衛星によるガス分布と,Hubble望遠鏡による星の分布を比較し,重力レンズ効果を用いて質量分布を調べたところ,両星団の周辺に暗黒物質が広がっている,という結論を得た,というもの.

    新聞記事では,宇宙論との関係まで結びつけようとしているが,ちょいと早計ですね.


 
2006/08/23 前回へ / 次回へ / ページ先頭へ
 

今日のニュースから

  • 【受賞報道】フィールズ賞,ネヴァンリンナ賞,ガウス賞
    国際数学者連盟(International Mathematical Union)は,4年に一度開催する国際会議において, Fields賞(数学分野,40歳以下,4人) , Nevanlinna賞 (情報科学分野,40歳以下,1人)の顕彰事業を行っているが,今年からさらに, Gauss賞 (応用数学分野,年齢制限なし)も加えて受賞者発表を行った.マドリードで開かれている国際会議の press releaseによれば,受賞者は,以下のとおり. (賞の紹介や,これまでの受賞者は,本サイトの フィールズ賞ネヴァンリンナ賞ガウス賞の項を参照のこと)

    フィールズ賞Andrei Okounkov for his contributions bridging probability, representation theory and algebraic geometry
    フィールズ賞Grigori Perelman (辞退) for his contributions to geometry and his revolutionary insights into the analytical and geometric structure of the Ricci flow
    フィールズ賞Terence Taofor his contributions to partial differential equations, combinatorics, harmonic analysis and additive number theory
    フィールズ賞Wendelin Wernerfor his contributions to the development of stochastic Loewner evolution, the geometry of two-dimensional Brownian motion, and conformal field theory
    ネヴァンリンナ賞 Jon KleinbergHe has brought theoretical insights to bear on important practical questions that have become central to understanding and managing our increasingly networked world. He has worked in a wide range of areas, from network analysis and routing, to data mining, to comparative genomics and protein structure analysis.
    ガウス賞 伊藤 清(確率微分方程式)

    最もニュースになっているのは,受賞者の一人,Perelman氏が今年はじめから数学界から身を隠し,今回の受賞も 辞退したこと.Perelman氏は,Poincare予想を解決したと言われていたが,それを数学界が公に認めるかどうかが 注目を集めていた.(本サイト 「ペレルマンとポアンカレ予想」 (2004/9/12)参照).今回の雲隠れ騒ぎは,「ポアンカレ予想」は,クレイ社の数学研究所(Clay Mathematics Institute)「ミレニアム懸賞問題7題」のうちの1つの100万ドル賞金の行方にも絡んで, 氏の欲の無さ,と大きく報道されている.

    今年から新設されたガウス賞には,京大名誉教授の伊藤清氏(90)が選ばれた.確率微分方程式の分野を創始し, ブラウン運動から経済学への応用まで60年以上に渡り広く応用されている.「ウォール街で一番有名な日本人」という 記事もあった.

    「ポアンカレ予想」解決の?ロシア数学者、雲隠れ(8/22 朝日新聞夕刊1面トップ)
    数学の「ガウス賞」に京大名誉教授の伊藤氏(8/23 朝日新聞朝刊)
    ペレルマン氏、フィールズ賞初辞退 ポアンカレ解け引退(8/23 朝日新聞朝刊)
    ペレルマン氏「自分の証明正しければ賞不要」(8/23 朝日新聞朝刊)



 
2006/08/20 前回へ / 次回へ / ページ先頭へ
 

今週の話題

  • 【研究評価】科学的創造性を測る C-index
    科学的創造性(scientific creativity)を計る指標の提案が,物理のプレプリントサーバに 論文として投稿され ( J. Solar, physics/0608006), イギリス物理学会(IOP) ニュース PhysicsWeb に 紹介された

    ある論文が引用している論文数 n と,その論文が引用された数 m を用いて, その論文自体の創造性を定義しようという試みで,定義は,大まかにいって, 各論文について,m-n を著者数で割り(その値を論文のknowledge-creation number, C, と呼び), 個人の全論文について,その値を集計する,というもの.

    citation だけをカウントするのでは,reviewを書いたときに本人の実際の仕事以上にciteされて しまったり,自己citationを多くしてcitation数を稼ぐことも可能でしたが,この定義では どちらも実効的ではなくなる,という利点があるとのこと.(reviewは多数の論文を引用するし, 自己citationは帳消しになる.)

    物理と生命科学でThomson-ISIのトップ10人について,この値を計算したところ, 物理では,1位−3位は,P.W.Anderson (物性物理), E. Witten (紐理論), S. Weinberg (場の理論) になり, 生命科学では,S.H. Snyder, B. Vogelstein, D. Baltimore となるそうだ.

    ちょうど昨年の今頃,論文の被引用率を測るh-index というのが同様に話題になった(当サイト 2005/08/22)が, h-index は,研究者人口によって分野間で大きく値を変えてしまうが,今回の指数は 分野を超えて同じような値になる,とのこと.

    言われてみれば,目から鱗とも言える簡単な算出法.分野を超えて,super scientist 探しが楽になった(!?).


 
2006/08/17 前回へ / 次回へ / ページ先頭へ
 

今日のニュースから

  • 【惑星科学】太陽系惑星の新定義,惑星3つ増えるか
     今日の朝日新聞朝刊の一面トップは, 『太陽系の惑星、一気に3個増か 国際天文学連合が新定義』という記事だった. チェコ・プラハで開催中の国際天文学連合(IAU, International Astronomical Union)総会で,太陽系の惑星の新定義が提案されたことの報道である.IAU総会は,3年に一度 開かれる会議で,惑星の定義は今回の目玉とされ,その採決は24日の予定である.
     このサイトでもしばしば記録してきたが, 最近の観測技術の進展により,冥王星は結構小さいものだと分かってきて,同時に冥王星に匹敵する大きさの天体がいくつか発見され, 太陽系の惑星の定義が問題になってきた. 冥王星が存在する領域に,エッジワース・カイパーベルト天体(Edgeworth-Kuiper Belt Object)あるいは トランス・ネプチュニアン天体と呼ばれる 小天体の集合場所があり, 2005年には冥王星(直径2320Km,公転周期248年)よりも大きな直径を持つ天体 「2003 UB313」(直径2390Km,公転周期557年)が発見され、第十惑星か、と話題になったことは記憶に新しい. (2002年には,直径1200Km,公転周期285年のクワオアー (50000 Quaoar) ,2003年には,直径1700Km,公転周期10500年のセドナ(90377 Sedna)が発見されて話題になった.)これまで「惑星」と「小惑星」(最大のものは,セレス(1 Ceres)で直径950Km,公転周期4.6年 )の厳密な定義がなかったため, 今回の提案が注目されることとなっている.
     8/16 国立天文台astro topicsによれば, 「惑星の定義」として提案されたのは,次の条件.(原文は,IAU2006のページにあり.)
    1. 惑星とは、(a)十分な質量を持つために自己重力が固体としての力よりも 勝る結果、重力平衡(ほとんど球状)の形を持ち、(b)恒星の周りを回る天体 で、恒星でも、また衛星でもないものとする。
    2. 黄道面上で、ほぼ円軌道を持つ、1900年以前に発見された8つの Classical Planets と、それ以外の太陽系の天体を区別する。後者は、 すべて水星より小さい。また、セレスは 1. の定義から惑星であるが、歴史的 理由により、他のClassical Planets と区別するため、 Dwarf Planet と呼ぶ ことを推奨する。
    3. 冥王星や、最近発見されたひとつまたは複数のトランス・ネプチュニアン 天体は、1. の定義から、惑星である。Classical Planets と対比して、これら は典型的に大きく傾いた軌道傾斜と歪んだ楕円軌道を持ち、軌道周期は200年を 超えている。われわれは、冥王星が典型例となる、これらの天体群を、新し いカテゴリーとして、Plutons と呼ぶ。
    4. 太陽をまわる他のすべての天体は、まとめて Small Solar System Bodies と呼ぶこととする。

     重力平衡形状となるのは、地球の質量の約10000分の1(月の約150分の1)が目安. 小惑星セレスは(Dwarf Planetと呼ばれる)惑星に昇格.また, 冥王星の衛星といわれてきたカロン(Charon,直径1186km)も、共通重心が冥王星の外にあることから, 独立した惑星(二重惑星,どちらもPluton)となる.また,クワオアーとセドナは、セレスより大きいとみられるが、球形が維持できているかどうかが未確認などの理由で、今回は惑星とされなかった。IAUによると、こうした惑星候補は少なくともあと12天体あるという。
    以上をまとめると, 太陽系には現在、12の惑星(水星、金星、地球、火星、セ レス、木星、土星、天王星、海王星、冥王星、カロン、2003UB313)があり、 このうち Classical Planets は8つ、 Dwarf Planetが1つ,Plutons が3つということになる.
     まだ,本決まりではないが,惑星の覚え方も,星占いもいろいろ変更になりそうだ.朝日新聞では,星占いは今後「守旧派と進化派とに2分するだろう」というある占い師のコメントも掲載していた.
    朝日新聞より無断転載.


 
2006/08 のネタ (掲載は 2006/08/28) 前回へ / 次回へ / ページ先頭へ
 

雑誌記事から

  • 【アップル】タイムマシン,できる
    Apple社がTime Machineを作った.次期OSの10.5 (Leopard)で標準装備されるそうだ. 7月に行われた デモンストレーションの映像 で見ることができる(開始後2分50秒のところ).ファイルの変更履歴をすべて記録し,コンピュータの内部を3日前とか1ヶ月前とか,任意の過去の状態にもどせる機能だそうだ.すばらしい.未来の状態へは行けないらしい.当たり前か.

    同時に発表された機能にSpace(上記のビデオ映像で,開始後8分の所から)がある.Linux系で装備されているマルチデスクトップ機能にさらにウィンドウのデスクトップ移動機能を含めたものらしい.すばらしい.現在のMacOSでは,とりあえずデスクトップに開いているウィンドウをすべて一度に表示させるExposeという機能がある.仕事の効率化に対するMacの開発姿勢を感じさせる機能だ.(おそらく開発者のデスクトップが混沌としているので,このような機能開発に迫られたのだろう.いいことだ.) しかし,TimeとSpaceを同時にリリースするとは,相対論研究者泣かせである.

    以前,アメリカで,いくつものパチンコ玉がくるくる動いて時間を知らせる「Time Machine」という時計を売っているのを見かけたことがある.買いそびれてしまって,今でも探している.


 
2006/07 のネタ (掲載は 2006/08/24) 前回へ / 次回へ / ページ先頭へ
 

雑誌記事から

  • 【イベント】計算尺をつくる
    日経サイエンス2006年8月号の記事「計算尺を知っていますか」(原文はC. Stoll, Scientific American,2006-5, 原題はWhen Slide Rules Ruled)では,電卓登場前に科学者が必携だった計算尺が紹介されている.対数スケールを上手く利用することにより,かけ算や割り算が行えることや,実際にコピーして製作できるサンプルも付いている. 1953年のIBMのコンピュータの広告は, 「技術者150人分の計算能力(150 Extra Engineers)」という宣伝コピーと共に,計算尺を持つ技術者の絵が描かれている. ちなみに計算尺の英訳は,calculating scaleとかslide rule.計算尺を使う,は,calculate on a slide rule.
    私も作ってみて,なかなか面白かったので,大学1年生の授業でも「夏休みの宿題」としてプリントにして配布した. 「作って提出するんですか」と真面目に聞いてきた学生もいた.^^; 
    計算尺を利用するにあたっては,繰り上げ繰り下げは自分で 前もって予測しておく必要があり,単なる電卓で答えを得る以上に頭を使う. もともと計算は,頭を使うもののはずだったなあ,と再認識させられる. 計算尺推進委員会というページもあり,計算方法やキット・ 今でも購入できる店へのリンクなどがある.

    ところで最近,同じく,手を動かして確認すると感動するモノとして, ミウラ折りがある.一瞬で開いたり畳んだりすることができる紙の折り方で, 宇宙科学研究所(現宇宙航空研究開発機構)の三浦公亮氏が,人工衛星の太陽電池パネルのために考案したもの. 小学生の子供も楽しんで折っていた. 地図の折り方として,最近は本屋でも見かけるようになった.商品として折るときは,ちょっと手間がかかりそうな 気もするが.


 
2006/07 のネタ (掲載は 2006/08/19) 前回へ / 次回へ / ページ先頭へ
 

今年の話題

  • 【イベント】 湯川・朝永 生誕100年
     2005年は,アインシュタインの奇跡の年から100年ということで,世界物理年と制定され,さまざまな行事が行われた. 2006年の日本の物理界は,「湯川・朝永生誕100年」という節目を迎え,盛り上がろうとしている. 共に素粒子物理学者で,日本初および2番目のノーベル賞受賞者.一番盛り上がっているのは,二人の母校である京都大学で, 記念事業を次々と打ち出している.岩波書店の雑誌「科学」は, 2006年4月号で「湯川・朝永生誕100年」の特集を組んでいる.また,専門的になるが,「素粒子論研究」誌は,112巻6号(2006年3月)で, 2005年11月に行われた研究会 「学問の系譜 −アインシュタインから湯川・朝永へ−」の集録を掲載している.こちらは235ページもありながら1000円で購入でき,「コピーするより安い」というコピーで業界に宣伝されている.読み応えがある集録で,いつか このwebでも紹介したい.

     湯川秀樹(1907年1月23日 - 1981年9月8日,旧姓:小川秀樹)は, 陽子と中性子との間に作用する核力を媒介するものとして中間子の存在を予想し,この業績により, 1949年にノーベル物理学賞を単独受賞した.中間子理論の発表は,1935年28歳の時で,論文タイトルは 「素粒子の相互作用について」.その後も 非局所場理論・素領域理論の提唱を行っている. 湯川のノーベル賞受賞報道は、敗戦・占領下の国民に大きな希望を与えたと言われている. 湯川は反核運動・平和運動にも積極的に携わり、Russel-Einstein宣言に共同宣言者として名前を連ねている. 1952年に京都大学内に建設された湯川記念館は,現在では基礎物理学研究所 (Yukawa Institute for Theoretical Physics)となり,日本の理論物理学の共同研究所として発展している.

     朝永振一郎(英語表記はSin-Itiro Tomonaga、1906年3月31日 - 1979年7月8日)は、 場の量子論を相対論的に共変な形式に改めて定式化した超多時間理論(1943)や、量子電気力学の発散の困難を解消するためのくりこみ理論(1947)を提唱した.「くりこみ」は無限大の出現を防ぐ計算手法で,英語ではrenormalizationとなる. くりこみの手法を用いて、水素原子のエネルギー準位に見られるいわゆるラムシフトの理論的計算を行い、実測値と一致する結果を得た。この業績により、1965年にJulian Schwinger, Richard P. Feynmanと共同でノーベル物理学賞を受賞する. 多趣味の人としても知られ,著書も多い.

     湯川も朝永も中学から大学まで同期で,京都府立一中(現京都府立洛北中学校・高等学校)卒,第三高等学校卒,京都帝国大学理学部物理学科卒.ちなみに 二人の父親はどちらも京都帝国大学教授.ちなみに湯川は25歳で,朝永は37歳で結婚した. 同じ素粒子物理を専攻している場合,業績に関しては互いに相当なプレッシャーがあったのではないだろうか.

     京都大学は,2006年12月11日--13日に国際シンポジウム 「Yukawa-Tomonaga Centennial Symposium --- Progress in Modern Physics ---」 を開催する.主催者から素粒子論グループに流されたメールには, 「単なる生誕百年のお祝いのセレモニーではありません。目的はあくまでも今後の基礎物理学 の展望を得ることにあり、湯川・朝永の業績を振り返ることもその観点からなさ れるもので、これからの物理を切り拓いて行くべき若手研究者の多数の参加を期 待しています。」とあった.

     ちなみに,京都大学は,大学ブランド品として「湯川・朝永記念チョコレート」を発売するそうである.湯川・朝永と チョコレートに関係は見いだせないが,学長の一声で決まったとか...


 
2006/07 のネタ (掲載は 2006/08/21) 前回へ / 次回へ / ページ先頭へ
 

雑誌記事から

  • 【科学政策】NASA科学予算の大幅削減
    日経サイエンス2006年8月号に翻訳記事として掲載されている「NASAの逆噴射」(原文はScientific American誌,号不明)では,2年前のブッシュ大統領の 「有人月旅行計画」発表の実現のために,NASAの科学研究予算が大幅に凍結されていることが報告されている.

    ブッシュの新宇宙開発戦略(本サイト 2004/1/19) では,当初から予算不足が心配されていた.それでも,昨年の9月の時点では,NASAのMichael Griffin長官は,「有人月旅行計画のために,他の科学研究費は削らない」と明言していた.しかし,今年2月に発表されたNASAの予算では, 科学研究費は20%(64億ドル)削減され,同じGriffin長官が「国際宇宙ステーションを完成させ,有人宇宙飛行船CEVを 2014年までに稼働させることは,この期間の科学研究よりも優先される」と発言したという.

    中止,延期された科学計画は以下の通り.

    中止 深宇宙気象観測
    フーリエ変換分光静止衛星(GIFTS)
    ハイドロス衛星
    木星氷衛星周回機(JIMO)
    ケック・アウトリガー望遠鏡
    火星探査シリーズ(2011年開始)
    火星周回無線衛星
    核分光望遠鏡アレイ(NuSTAR)
    無期延期 コンステレーションX
    宇宙空間重力波レーザー干渉計(LISA)
    火星からのサンプルリターン
    赤外線天文学成層圏天文台(SOFIA)
    地球型惑星探査機(TPF)
    1-3年の延期 全球降水観測ミッション(GPM)
    ランドサットデータ連続ミッション
    極軌道環境観測衛星システム(NPOESS)
    軌道上炭素観測装置
    宇宙干渉計ミッション(SIM)
    広視野赤外線サーベイ衛星(WISE)
    ずいぶんと乱暴な決定に対して,記事では「節約のつもりが無駄になる恐れ」と警告している.個人的には,次世代の 重力波観測のLISA計画が棚上げされてしまったことが非常に残念である.計画の中止は,直接関わる研究者だけではなく, その分野の研究者のmotivationをずいぶんと削減してくれる.

    1992年にクリントン政権が SSC (Superconducting Super Collider、超伝導超大型加速器) 計画(建造予算80億ドルのうち, 既投資20億ドル)を中止したことは,巨大科学の方向転換と言われた. SSCは,宇宙ステーション計画・ヒトゲノム計画と並ぶプロジェクトとして位置づけられていたが,予算の規模や,成果の還元の点 からは,中止は仕方なかったのかもしれない.米国の一般相対論の研究者は,SSCの二の舞を踏まないように, Richard IssacsonやBevery BergerをNSFに送り込んできた.そのおかげでLIGO重力波干渉計は予算が通って運用に 至った(と研究者間では慕われている)のだが,今回のLISAの延期は彼らの力も及ばなかったことを示している. 一般受けの良い「宇宙計画」だけを優先してしまうことは,単なる政治家のパフォーマンスとも言えるのではないだろうか. 功罪は,もっと論じられてもよいだろう.

    日本でも, 「20年後に有人宇宙飛行」という計画(本サイト 2005/4/12)があるが, アメリカのこのような乱暴さは絶対に真似してもらいたくないものだ.


 
2006/06 のネタ (掲載は 2006/09/12) 前回へ / 次回へ / ページ先頭へ
 

最近の論文から

  • 【宇宙物理】GravLens Issue 7
    重力物理関係のプレプリントからいくつかの論文を紹介するGravitational Lens (PennState) の Issue 7 が掲載された.今回は次の3つ.抄訳+原論文のabstract抄訳+まとめ.

    • WMAPによる宇宙パラメータの決定 [Mapping the Universe We Live In]
      2001年より観測を開始しているWMAP衛星(Wilkinson Microwave Anisotropy Probe)による宇宙背景輻射の 3年目のデータが公開された.Spergelらは,これまでに得られている他の観測データも含め,単純な6つの パラメータに基づく宇宙モデルが最も整合的であるという.すなわち,一様・等方・巨視的に曲率ゼロの時空で 宇宙項が存在し,通常の物質・輻射・ダークマターの3種類の物質から構成される.初期宇宙ゆらぎは断熱的であり, スケールに依存しないランダムなゆらぎであると考えられる.現在の宇宙論の問題は,ダークマター・ダークエネルギー・初期ゆらぎ生成のメカニズムの3つになった.WMAPのデータはこの3つに対し,ダークマターがバリオンではないこと,ダークエネルギーの従う状態方程式が宇宙項に非常に近いこと,構造形成モデルはテンソルモードを持つかスペクトルインデックスが1以下であること,を示唆している.

      Spergel et al., Wilkinson Microwave Anisotropy Probe (WMAP) Three Year Results: Implications for Cosmology - astro-ph 0603449

      以下は,データの補足.

      • 6つのパラメータとは,(matter density, Omega_m h^2, baryon density, Omega_b h^2, Hubble Constant, H_0, amplitude of fluctuations, sigma_8, optical depth, tau, and a slope for the scalar perturbation spectrum, n_s) のこと.
      • 他の観測とは,small scale CMB data, light element abundances, large-scale structure observations, and the supernova luminosity/distance relationship
      • WMAPデータだけであれば,best fitとなるモデルは,power-law flat LCDMモデルで,各パラメータは, (Omega_m h^2, Omega_b h^2, h, n_s, tau, sigma_8) = (0.127+0.007-0.013, 0.0223+0.0007-0.0009, 0.73 +- 0.03, 0.951+0.015-0.019, 0.09 +- 0.03, 0.74+0.05-0.06).
      • 単純なインフレーションモデルの予言とconsistentであり,CMPゆらぎはGaussianからのズレはない.

    • 超新星爆発による重力波放射モデル [Peering into Core-Collapse Supernovae]
      Ottらは,コア崩壊型の超新星爆発で,重力波放出が支配的になると,中性子星コアの振動を引き起こすだろう,という新しい予想を提案した.Newton重力・軸対称時空での輻射流体シミュレーション結果に基づくもので,重力波の振動は,流体のコアでのバウンス後,数100ミリ秒でg-modeで支配され,さらに数100ミリ秒持続する.この結果によれば,回転のないコア崩壊型の超新星爆発でも我が銀河内であれば,LIGOクラスの重力波干渉計で観測できるほどの重力波を放出する可能性が出てくるという.鉄のコアが大きいほど重力波が強くなり,Mpcの距離でも観測できる可能性があるという.

      Ott, Burrows, Dessart and Livne, A New Mechanism for Gravitational Wave Emission in Core-Collapse Supernovae, - astro-ph 0605493.

    • 中間質量ブラックホールからの重力波 [Hunting Black Hole Middle-weights]
      太陽質量の100倍から10^5倍程度のブラックホールを,中間質量ブラックホール (IMBH, intermediate mass black hole)と呼ぶ.Rasioらは,IMBH-IMBHの合体の最終段階での 重力波放出とLIGO干渉計/LISA衛星での観測可能性を検討し, (advanced) LIGOでは年に10回のIMBH-IMBH合体の合体時と減衰が観測され, LISAでは年に数10の合体直前(inspiral)の重力波が観測されるであろうと報告した.ただし,イベント数は 銀河クラスター質量と密度の分布によって大きく異なってくる.

      Fregeau, Larson, Miller, O'Shaughnessy and Rasio, Observing IMBH-IMBH Binary Coalescences via Gravitational Radiation - astro-ph 0605732.


 
2006/06 のネタ (掲載は 2006/08/24) 前回へ / 次回へ / ページ先頭へ
 

今日のニュースから

  • 【宇宙物理】ブラックホール降着円盤と磁場
    6/22 Physics Web に紹介された J. M. Miller et al, Nature 441 (2006) 953の記事. ブラックホールの周りの物質が降着円盤を形成しながら,ブラックホールへ飲み込まれていくメカニズムは, 重力だけで考えるなら(角運動量が失われないために周回運動するだけなので)不足であり,以前から磁場が 作用していると,考えられていた.磁場がもたらす内部粘性(internal viscosity)や,ディスク波(disk winds) が角運動量を奪う手段として理論的に考えられていたが,観測的な事実はなかった. Millerらの論文は,Chandra衛星のX線観測に基づき,ブラックホール連星GRO J1655-40に見られる X線吸収を調べることにより,ディスク内部の磁場粘性が引き起こす圧力や磁場中心力(magnetocentrifugal forces) によって,ブラックホールへの物質降着が強められていることを示している,という.

 
2006/05 のネタ (掲載は 2006/08/22) 前回へ / 次回へ / ページ先頭へ
 

雑誌記事から

  • 【物理学史】パリティ誌記事『EinsteinとPhysical Review』
    丸善の「パリティ」誌には,アメリカ物理学会誌「Physics Today」の翻訳が掲載される. 昨年2005年は,Einsteinに関する記事がPhysics Todayに多く載り,その翻訳ものが,パリティに今,掲載されている. パリティ5月号にあるダニエル・ケネフィックによる「アインシュタインと『フィジカルレビュー』誌の碓執」という記事[1]が 面白かったので,紹介したい.

    Einsteinは,一般相対性理論の完成後,数ヶ月後には重力放射(重力波)という概念を導入した.電磁放射とのアナロジーから 非常に自然と思われていたため,1930年代には多くの科学者がその存在を原理的には信じるようになっていた. しかし,Einstein自身は,「重力波は存在しない」という論文をRosenと共に執筆し,1936年にPhysical Review誌 に投稿した.

    Physical Reviewの編集者は,1ヶ月後,査読者による10ページに及ぶ間違いを指摘するレポートをEinsteinに返送する. 自らの論文が査読者に渡り,かつ再考を促されたことに対してEinsteinは激怒し,投稿を取り下げ,以後Physical Review誌に 論文を投稿することはなかった,という.当該論文はその後,フランクリン研究所紀要に投稿され,直に受理されたが,著者校正の 段階で,結論が180度変更されることになったという.現在では,「重力波は存在しない」との結論に至った論文原稿は 存在していないらしいが,平面重力波の厳密解研究から,Einstein方程式が特異性のない周期的な波動解を全く持たないことが 示されるので,この事実を根拠に重力波を表す解が存在しない,と導いたのではないか,と考えられるという.(今日では 平面重力波の厳密解では,座標特異性が存在することが知られているが,当時は座標特異性と物理的特異性を区別する手法は 確立していなかった.)

    編集者はTate,査読者はRobertsonであったことが[4]で述べられている.Robertsonは,Einsteinが査読レポートに 拒絶反応を示したことを知り,Einsteinの助手Infeldに,論文の誤りを指摘したという.InfeldがEinsteinに,この話を 伝えたことが,著者校正時に結論が変わった理由だと考えられるらしい.つまり,Robertsonは,論文査読を行い, なおかつ誤った結論のままEinsteinが論文を出版して不名誉になることを,別の手段で穏便に阻止したことになる. Robertsonの論文査読は依頼から11日で返送されていたという.

    以上から,学ぶべきことをまとめると,次のようになるだろうか.

    • 自分の考えに抗する考えには,感情に走らず,謙虚に耳を傾ける.
    • レフェリーになったら,きちんと真摯に対応する.

    アインシュタインの間違いをまとめたページを作った.

    [1] D. Kennefick, Physics Today 58 (2005-9); (パリティ, 21 (2006-5) に邦訳あり.訳:小玉英雄 )


 
2006/05 のネタ (掲載は 2006/08/18) 前回へ / 次回へ / ページ先頭へ
 

最近のニュースから

  • 【科学政策】取り残された数学研究
     「忘れられた科学-数学 主要国の数学研究を取り巻く状況及び我が国の科学における数学の必要性」と題した レポートが,2006年5月,文部科学省 科学技術政策研究所から報告された. (レポートの全文はここ
     内容は,ざっと次のようである.
    • 世界の数学論文の出版状況を比較.分野は数理科学(純粋数学,応用数学,統計学など)で,論文数を比べると, 日本は6位である.(1位から順に,アメリカ,フランス,ドイツ,中国,イギリス).一方で,全分野の論文数では日本は アメリカに次いで2位である.だから,数学研究は他の分野に比べて活発ではない.
    • 数学研究に関する各国の研究費配分を比較.科研費補助金における数学研究費の割合は1.9%の数十億円(10年前は2.6%),日本の数学研究所は8カ所, 数学の学位取得者は全体の1.2%で就職率は45%.米国では研究費の0.5%の440億円(10年前は0.4%)が数学研究費であり, 学位取得者は全体の2.2%で就職率は56%.フランスでは研究費の割合1.6%で190億円,研究機関は31,数学の学位取得者は3.3%で就職率は60%. ドイツでは,研究費の割合2.6%で36億円,他に数学研究に関する国家プログラムがある.
    • 日本の数学研究に関するアンケート結果.科学技術政策研究所への意見聴取を行う専門調査員2017名のうち,402名から回答を得た結果, 回答者の77%の研究内容が数学と(非常に〜やや)関係があるが,研究チームに数学の専門家がいない割合が74%.回答者の63%が現在, 数学者を必要としており,将来的には86%が数学者を必要としている.
    • 結論.日本の数学研究は,他国に比べて厳しい状況にあり,研究者からは国策に対し熱い期待が寄せられている. 他国の政策にタダ乗りすることなく,研究資金や研究振興を拡充することが必要である.

     前半の各国の比較は「はじめから結論ありき」といった印象.後半のアンケートはちょっと視点が曖昧ではある.なぜ「数学」に限った調査なのか, という疑問も抱くが,結論は予想通り.そもそも「数学」は,純粋数学から応用数学まで幅広く,研究スタイルも様々である.結論づけるとなれば, 抽象的な言葉で終わってしまうだろう.
     このレポートの目的は,数学研究の振興にあるようだが,もっと調査対象を広げれば, 「数学研究全体の向上」だけではなく, 「純粋科学の研究にテコ入れが必要」とか「理系離れ対策のための教育改革」といった結論を導くこともできたのではないか.
     この種のレポートが,官製で報告されたからには何か政策を期待してしまうのだが...(例えば,科研費が採用されるとか.)どうだろうか.


 
2006/05 のネタ (掲載は 2006/08/31) 前回へ / 次回へ / ページ先頭へ
 

最近のニュースから

  • 【研究評価】研究分野の流行を示す m-index
    物理の研究分野の流行を計る指標の提案が,物理のプレプリントサーバに 論文として投稿され ( M.G. Banks, physics/0604216), イギリス物理学会(IOP) ニュース PhysicsWeb に 紹介された

    昨年の8月に,Hirschによる,論文の被引用率を測るh-index (当サイト 2005/08/22)を, 研究者個人にではなく, 研究分野に適用したもので,被引用率が大きい分野ほど, hot topicであろう,という考えに基づく. これをBanksは,h-b indexと命名している. h-index 10 は,個人の10本の論文が少なくとも10本に引用された,という指標であったので, h-b indexも同様である. また,さらに,h-b index を論文の出版経過年数で割った m-index も計算し, 分野の流行の継続性も調査している.

    Banksによれば,m>3 であれば,hot topicと見なすことができ, mもh-bも大きな値であれば現在もhot topicであると 結論できるという.逆にh-bが大きくてもmが小さければ,古いトピックになる. 物理分野で,m-indexの大きい順にtop 10のトピックを並べると,次のようになるそうだ.
    トピックm-indexh-b index
    カーボンナノチューブ(carbon nanotubes)12.85167
    ナノワイヤ(Nanowires)8.75105
    量子ドット(quantum dot)7.84149
    フラーレン(fullerenes)7.78140
    巨大磁気抵抗(giant magnetoresistance)6.82116
    M理論(M−theory)6.5879
    量子計算(quantum computation)5.2173
    テレポーテーション(teleportation)5.0861
    超弦理論(superstrings)3.9699

    大学院の学生が研究テーマを選ぶときに重宝だ,という結論であるが,果たしてそういう動機で 良いのだろうか.ちなみにBanksは物性物理を専攻する大学院生だそうである.


 
2006/04 のネタ (掲載は 2006/08/21) 前回へ / 次回へ / ページ先頭へ
 

最近のニュースから

  • 【基礎物理】陽子/電子の質量比は120億年で若干変化
    AIPのPhysics News 774が, 「陽子/電子の質量比は120億年で若干変化した」という論文 E. Reinhold et al, Phys. Rev. Lett. 96, 151101 (2006) を紹介している.

    物理の基本定数の定数性を疑う話は,物理の一分野としてよくある話だが,これまで,確固たる実験事実として 示された例はない.2001年に「微細構造定数$?alpha$は,過去小さかった」という観測結果を示す論文が出版されて 話題になったが,(Phys. Rev. Lett. 87, 091301 (2001); 私のレビューあり),QSOの吸収線系(FeII, MgI, MgII)を用いるこの話は, 宇宙論モデルの不定性もあり,業界全体で了解されるほど市民権を得ていない.

    今回の論文では,実験室で水素ガスに紫外線のレーザを当て,Lyman吸収光の詳細な波長を調べたものと, チリにある欧州南天文台が観測した水素ガス雲での吸収光の値を比較した.後者は,120億年前のQSOの光の 吸収を見ているので,時差120億年である.吸収波長のいくつかは,陽子/電子の質量比 $¥mu=m_p / m_e $ に依存する. 現在値は1836倍だが,解析結果は,$¥Delta ¥mu / ¥mu = (2.0 ¥pm 0.6) ¥times 10^{-5}$ すなわち,5万分の1ほど (0.002%ほど) 減少していることを3.5 $¥sigma$ レベルで示しているという.

    一方のデータが実験室であることと,確からしい吸収線のメカニズムを用いていることで,信憑性が高い.


2006年1月以前の分はここ


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